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【小宮良之の日本サッカー兵法書】クライフしかり、ジダンしかり――勝てる監督が有する言葉のマジック

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2017年06月29日

生きざまを見てきたからこそ、その言葉の本質を信じられる

威厳に満ちているが、畏怖されることはない。口数は少ないが、選手個々に対するフォローを欠かさない。怒鳴ったりはしないが、物事の良し悪しははっきり示す。その絶妙なバランスが、ジダンを有能な指揮官たらしめ、多くのタイトルをマドリーにもたらしているのだろう。 (C) Getty Images

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  1991-92シーズン、ヨハン・クライフはバルセロナを率い、チャンピオンズ・カップ(現リーグ)決勝に進出。イタリア・サンプドリアとの一戦を控えるロッカールームで、彼は「初の欧州王者になる!」と気合を入れた後、緊張で身体を固める選手に向かってこう言ったという。
 
「ウェンブリーだぞ、楽しんでこい」
 
 サッカーボールを最高の舞台で蹴る、という子ども時代からの夢を、クライフは選手たちに思い出させた。それによって、結果に対してがんじがらめになっていた選手たちの気持ちを解きほぐしたのである。逆説的な魔法の言葉と言えるだろう。
 
 そしてバルサは、サンプドリアを撃破し、欧州王者になった。
 
 名将に共通するのは、言葉そのものよりも、その生き方にある。クライフは「無様に勝つくらいなら、美しく散れ」と常々言い、まさに彼自身、そういう華やかなサッカーを選手として志向し、監督としても美学を求めてきた。それが、彼の生きざまだった。
 
 選手はその姿を目に焼き付けてきたからこそ、クライフの発する言葉の本質を信じられた。
 
  今シーズン、レアル・マドリーで欧州連覇を達成したジネディーヌ・ジダンも、生きざまで選手を引っ張る。彼は大声を出さず、囁くように言う。厳粛な空気で、士気を高める。小手先の戦術は、簡単に蹴散らしてしまうほどに。
 
 言葉だけを選手に伝えても、それは心の奥にある装置を点火することはない。
 
文:小宮 良之
 
【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『おれは最後に笑う』(東邦出版)など多数の書籍を出版しており、今年3月にはヘスス・スアレス氏との共著『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』(東邦出版)を上梓した。
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