【ベガルタ戦記】渡邉晋の『日晋月歩』|守護神が成長する糧となるいくつかの苦い経験

カテゴリ:連載・コラム

渡邉 晋

2017年06月20日

広島戦とFC東京戦、失敗を成長へとつなげている。

鳥栖戦で好パフォーマンスを見せたダン(シュミット・ダニエル)。彼は自分の失敗を糧に、着実に成長している。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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 きっかけは10節・FC東京戦(0-2)の2失点目ではなかったかと思う。ボールを無理にキャッチしにいって前にこぼしてしまい、大久保嘉人選手にゴールを許したものだ。あの苦い経験を、自身の糧とできているのだろう。
 
 苦い経験といえば、8節・広島戦(3-3)も同様のはず。アディショナルタイムに入って3-2でリードしている状況。そこでダンがフィードを選んだのだが、味方につながらず、そのスローインから同点弾を許してしまった。
 
 あのプレーについてダンとは話をしていて、「振り返ってみてどうだ」と訊ねたら、「あのシーンは時間を使うという判断が必要だった」と言っていた。
 
 似た場面はルヴァンカップ6節・札幌戦(2-1)でもあった。GKのポジションに入っていたのは(関)憲太郎。同じくアディショナルタイムにボールをキャッチ。その瞬間に(石原)直樹と(佐々木)匠が良いタイミングで前へと飛び出した。
 
 フィードをして、もしボールが通れば高い位置でボールをキープできる。もしくはトドメとなる3点目を奪えたかもしれない。しかし、憲太郎は慌てずに時間を使うことを選択した。
 
 ダンはそのプレーをベンチで眺めていた。翌日、「あのプレーをどう思った」と聞くと、「僕もベンチから憲太郎さんに『蹴るな』って言ってました」と。そういった学び、経験値を上げることがより高みへと進む要素となるのだ。
 
 あえて監督という立場から注文をつけるのであれば、ゲームをコントロールする力をもっと磨いてほしい。90分間のなかで最後方から試合の流れを読み、コーチングで味方を鼓舞したり、ゲームを引き締める。GKにとって大切な要素のひとつだ。そのあたりは憲太郎に一日の長がある。
 
 経験のなせる技かもしれないし、もしかしたら人間力、つまりは人となりが言葉に現われるものかもしれない。そんな言葉を聞いた10人が「よっしゃ」と奮い立つ。とても大切なことだ。
 
 選手の成長を感じつつ、一方で彼らをさらに向上させ、奮い立たせるには監督の言葉が何より大切。そのためにも、私自身がもっと人間力を高めなければいけないと日々感じている。まさに「日進月歩」だ。
 
構成●古田土恵介(サッカーダイジェスト編集部)
 
※渡邉監督の特別コラムは、J1リーグの毎試合後にお届けします。次回は6月25日に行なわれる16節・C大阪戦の予定。お楽しみに!
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