【黄金世代】第3回・小笠原満男「誕生、東北のファンタジスタ」(#1)

カテゴリ:特集

川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

2017年06月16日

いろんな遊びの中にも、大事な“学び”があった。

初めて“日の丸”に選ばれたのは、1994年のU-16日本代表合宿。中列左から2人目が15歳の小笠原だ。そして同じ列の右から3人目には……。(C)SOCCER DIGEST

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 1979年4月5日、東北のファンタジスタは岩手県盛岡市で生を受けた。
 
 物心ついた時にはサッカーボールを蹴っていたという。父親が地元の社会人チームでプレーしていたため、練習や試合の際にはくっついていき、大人たちに遊んでもらっていた。
 
 小学生となり、近隣に唯一あったサッカー少年団への入部を切望する。だが、無念にも対象は小学3年生から。父親とこんな会話をかわしたという。
 
「サッカーを本気でやるなら、最後までやり抜けって言われた。一生懸命やってそれでも入りたいならいいけど、やって途中で辞めるくらいならいますぐ辞めろと。約束したよ、それは。だから小3まではほとんどひとりで練習してた。家の前でね。壁に向かってひたすらボールを蹴って、たま~に大人に相手してもらったり。そんな2年間だった」
 
 壁に蹴って、止める、また蹴る。単純な反復練習だったが、ひたすら繰り返すことで、狙ったところに蹴れるようになっていった。誰に教わるでもなく、自然と身に付いた基本技術。本人は、「完全な天然児。ブラジルのストリートサッカーみたいなもの」と説明する。
 
「いまはサッカーだったらサッカーだけだったりする。でも俺は、野球もやったし鬼ごっこや缶蹴りも本気でやった。いま思えば、ああいうのってすごく大事だったなと思う。
 
 遊びとはいえ、決められたルールの中でぎりぎりの駆け引きってあるじゃない? 野球だってフライを取るためには落下地点を読まなきゃいけなかったり、ステップワークやら、なにかしら吸収できるものがある。サッカーに熱中はしてたけど、そうしたいろんな遊びの中にも、大事な“学び”があったよね」

 
 晴れて、太田東サッカー少年団に入団する。小笠原は小3ながら、すぐさま試合に出場。上級生たちに揉まれながら、鍛えられていく。「ありがたかった。ぜんぜん通じなかったけど、あれが田舎の少年団のいいところ。すごく技術を大事にしてたし、いいチームに入れて良かった」と懐かしむ。6年時には主将を任され、全日本少年サッカー大会にも出場した。
 
 小学校時代はフォワードで、「いまじゃ想像もつかないだろうけど、スピード溢れるドリブラーの点取り屋」だったという。盛岡市立大宮中に進学すると、中盤にポジションを下げ、「パスを送るところに楽しさを感じるようになった。小学校ではぜんぶ自分で行って点を取ってやるみたいな感じだったけど、アシストの喜びを知り出すのかな」と、ファンタジスタへの布石を敷くのだ。
 
 圧倒的な技巧を誇る小笠原が、青年時代に憧れたプロフットボーラーはいたのか。意外な選手の、意外なプレーに興奮したという。
 
「あんまりこれっていう選手はいなくて、レンタル屋さんでワールドカップのゴール集を借りてくるくらい。普通にマラドーナとかすごかったけど、ちょうど中2でJリーグが始まったから、もっと身近に見れるようになったよね。
 
 ジーコはすごいなぁとか思ってたけど、一番印象的だったのがラモス(瑠偉)さん。必死にボールを取り返しにいく姿を見て驚いた。あれくらいの選手でもやるんだって。小さい頃から『取られたら取り返せ』っていつも言われてきて、ああ、プロでもするんだと。ああいうプレーがすごく好きだった」

 
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