【ベガルタ戦記】渡邉晋の『日晋月歩』|感慨深い一戦で成長の証を示した背番号18

カテゴリ:連載・コラム

渡邉 晋

2017年05月09日

日本代表も狙える逸材だと思っている。

FC東京戦で古巣対決に臨んだタマこと三田啓貴。ゲームを作るという意味でも彼が果たした役割は大きかった。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 前回の対戦時(3月15日のルヴァンカップ1節)では0-6と大敗。タマは気持ちが空回りしていた。ピッチに送り出す時に見た顔つきは強張っており、とてもじゃないが平常心とは言えなかった。
 
 なので、今回はタマと目が合うたびに「リラックス、リラックス」と執拗に声を掛けた。あいつは「うるせぇな」と思ってたんじゃないかな(笑)。
 
 その効果もあってか、良い精神状態で相手と向き合えていたと感じる。本人は「決められるシーンでしっかりとゴールを奪いたかった」という気持ちはあるだろうけど、ゲームを作るという意味でもタマが果たした役割は大きかった。
 
 大袈裟な言い方ではなく、ルヴァンカップのFC東京戦に比べればパフォーマンスの質は段違いに良かった。展開力とスペースを見つけてボックス内まで侵入する能力を遺憾なく発揮しており、負け試合といえども、手応えを掴んだはずだ。
 
 また、巡り合わせもあって、タマのJ1通算100試合出場の記念セレモニーをキックオフ前に行なった。ご両親もスタジアムに顔を出していたし、対戦相手がFC東京だったという事実と相まって、きっと思い出に残る一戦になったと思う。
 
 自分の現役時代の話を少しさせてもらえば、古巣戦では「やってやろう!」という想いがあった。1996年に札幌に入団するも、1年でクビに。甲府に拾ってもらえたのだが、札幌戦では気負っていたのを覚えている。
 
 仙台へ移籍後の甲府戦は少し心の持ちようは違った。甲府が快く送り出してくれたこともあったし、お世話になったことへの感謝と、それでも試合には負けられないプロとしての矜持と……。
 
 古巣に、一緒に戦った仲間がどれだけ残っているのかということも心理面には影響してくる。スタッフを含めて様変わりしていると、心境にも少し変化がある。
 
 それを含めて考えると、タマは感慨深かったろう。当時のチームメイトは多くおり、監督のシノさん(篠田善之)とは彼がコーチとなった2012年からの付き合い。気持ちが入らないほうがおかしい。
 
 今やタマは仙台に欠かせない選手だ。移籍して良かったと感じてもらえるようにしたいし、もうひとつステップアップできるように手助けもしたい。日本代表も狙える逸材だと個人的に思っている。
 
 成長した姿を戦うたびに披露すること。それが子どもの頃から面倒を見てくれたFC東京への、タマの恩返しと言えるのではないか。
 
構成:古田土恵介(サッカーダイジェスト編集部)
 
※渡邉監督の特別コラムは、J1リーグの毎試合後にお届けします。次回は5月14日に行なわれる11節・大宮戦の予定。お楽しみに!
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