「ネイマール批判」に反論。得点数だけで判断するのはあまりに安易だ

カテゴリ:メガクラブ

豊福晋

2016年12月10日

批判すべきは笑顔やトリックがなくなった時だ。

ゴールこそ少ないが、仕掛けやアシストは絶品のネイマール。メッシやスアレスの得点力を引き出している。写真:Rafa HUERTA

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「大事なのはゴールでもアシストでも、チームメイトを助けること。ゴールが決められない時期というのはあるもの。もちろん狙い続けるけど、入らないときもあるんだ」
 
 本人がそう語る通り、ゴールは決められていないが、チームへの貢献度はすこぶる高い。
 
 今シーズンはすでに公式戦通算で14アシストを記録しており、リーガだけに限ってもバルサでトップの数字だ。
 
 そして、最も注目したいのが、ネイマールの持ち味でもある、『Regate』(仕掛け)の回数だ。『アス』紙の統計によると、この仕掛けの回数でネイマールは圧倒的な数字を出している。
 
 ここまでの125回は断トツの最多で、2位のガブリエウ(レガネス)が89回、3位のジョアン・カンセロ(バレンシア)が87回と大きな差を付けている。
 
 左サイドを中心に、多種多様なフェイントやトリックを織り交ぜながら、ドリブルで仕掛ける姿は今シーズンも健在で、その回数は昨シーズンよりも増えている印象すら受ける。
 
 ここ最近はそれが、ゴールという最もわかりやすい結果に繋がっていないだけで、パフォーマンス自体は悪いどころか、十分に高いレベルにある。
 
 実際、カンプ・ノウで実際にプレーを見守り続けている観客は、昨今のネイマール批判に関して首を捻っているのではないか。
 
 左サイドでネイマールが持つと、カンプ・ノウの雰囲気が変わる。何か魅せてくれるのではないか、どんなテクニックを見せてくれのか――。そんな10万人の期待感が、スタジアム全体に満ちていく。
 
 軸足の裏でハイボールをトラップしたり、ボールを浮かせたり、ヒールパスを見せたり。ネイマールらしさは健在で、こうしたスペクタルはメッシにもスアレスにもない要素だ。それはかつて、同胞のロナウジーニョがバルセロニスタに抱かせた期待感に近いものがある。
 
 ゴールが取れないからネイマールを批判するー―。
 
 はっきり言おう。それは間違っている。
 
 ネイマールを批判すべき時それは、彼が笑顔と魅せる喜びを失い、トリックを封じ、効率性だけを前面に押し出し、ゴールだけを目指すようになった時だろう。
 
文:豊福晋
 
【著者プロフィール】
1979年、福岡県生まれ。2001年のミラノ留学を経て、フリーで取材・執筆活動を開始。イタリア、スコットランドと拠点を移し、09年夏からはスペインのバルセロナに在住。リーガ・エスパニョーラを中心に、4か国語を操る語学力を活かして欧州フットボールシーンを幅広く、ディープに掘り下げている。独自の視点から紡ぐ、軽妙でいて深みのある筆致に定評がある。
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