カルチョの「洗礼」を受けたオランダ人指揮官の巻き返しは?
全体的にポゼッション志向が強い上、1対1の攻防が主体となっているオランダ国内では、相対的に個のクオリティーが高いこともあって、支配的な地位を保ち続けたアヤックスだが、欧州の舞台では、CLで5年連続グループステージ(昨シーズンはプレーオフ)敗退を喫した。
また、そこから移行したヨーロッパリーグでも、積極的なプレスからの速攻などインテンシティーの高いサッカーをする格下相手(例えばロジャー・シュミット時代のレッドブル・ザルツブルグ)には翻弄されて完敗を喫するなど、戦術の限界を露呈したのもまた事実だった。
そんなチームの将、デブールの招聘については、攻撃的なスタイルでセリエAに新風を吹き込むことを期待する一方で、キャリアを通してイタリア・サッカーとの接点がほとんどないことを懸念し、カルチョのメンタリティーを理解して適応できるのか、と疑問視する向きも少なくなかった。
そこに開幕戦での、この完敗……。このところ毎年CL出場権(3位以内)を目標に掲げながら達成できないチームに失望と焦燥感を募らせているインテリスタの気分を反映してか、マスコミは早くも危機を煽って、デブールに批判の矛先を向け始めている。
23日付の『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は、1面トップに「インテル、すでに非常事態。デブール、すぐに4つの手を打つべし」という大見出しを掲げ、以下のような「上から目線」の提言を打ち出した。
1)フィジカルとメンタルの立て直し
2)4-3-3か4-2-3-1にシステムを固定
3)イカルディ、ペリシッチを絶対的レギュラーに
4)左利きのCBの獲得
一方、同日付の『コリエーレ・デッロ・スポルト』は、「フランク、零点」という大見出しで、3バックの採用、メデルのレジスタ起用、選手交代の失敗(ペリシッチ投入の遅れ、ヨベティッチよりもパラシオを優先)などを厳しくダメ出ししている。
母国オランダでは、これまでのキャリアにおける実績と名声もあって、批判はされてもそれなりのリスペクトを受けてきたであろうデブールにとっては、マスコミから集中砲火を浴び、それが次の試合まで1週間続くというストレスフルな状況は、おそらく初めての経験だろう。
今週末に行なわれる第2節パレルモ戦の後は、国際Aマッチウィークのため、3節まで2週間空くことになる。もし、パレルモ戦でも結果を残せなければ、さらに長い時間、彼は厳しく悪意に満ちた非難の嵐に見舞われることだろう。
これは、期待よりも疑問が大きい状況で迎えられた監督が避けがたく経験する、一種の「洗礼」である。
近年のインテルでも、スタート時点でこれを乗り越えられなかったラファエル・ベニテス、ジャンピエロ・ガスペリーニといった監督は、クリスマスを待たず解任の憂き目に遭い、一昨シーズンには就任2年目のワルテル・マッザーリも似たような状況でチームを追われた。
果たしてデブールは、この苦難を乗り切って結果を残し、マスコミとサポーターの評価と信頼を勝ち取ることができるだろうか。
文:片野 道郎
【著者プロフィール】
かたの・みちお/1962年生まれ、宮城県仙台市出身。1995年からイタリア北部のアレッサンドリアに在住し、翻訳家兼ジャーナリストとして精力的に活動中だ。カルチョを文化として捉え、その営みを巡ってのフィールドワークを継続発展させている。『ワールドサッカーダイジェスト』誌や当サイトでも、ロッシ監督とのコラボによる戦術解説や選手分析が好評を博す。
また、そこから移行したヨーロッパリーグでも、積極的なプレスからの速攻などインテンシティーの高いサッカーをする格下相手(例えばロジャー・シュミット時代のレッドブル・ザルツブルグ)には翻弄されて完敗を喫するなど、戦術の限界を露呈したのもまた事実だった。
そんなチームの将、デブールの招聘については、攻撃的なスタイルでセリエAに新風を吹き込むことを期待する一方で、キャリアを通してイタリア・サッカーとの接点がほとんどないことを懸念し、カルチョのメンタリティーを理解して適応できるのか、と疑問視する向きも少なくなかった。
そこに開幕戦での、この完敗……。このところ毎年CL出場権(3位以内)を目標に掲げながら達成できないチームに失望と焦燥感を募らせているインテリスタの気分を反映してか、マスコミは早くも危機を煽って、デブールに批判の矛先を向け始めている。
23日付の『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は、1面トップに「インテル、すでに非常事態。デブール、すぐに4つの手を打つべし」という大見出しを掲げ、以下のような「上から目線」の提言を打ち出した。
1)フィジカルとメンタルの立て直し
2)4-3-3か4-2-3-1にシステムを固定
3)イカルディ、ペリシッチを絶対的レギュラーに
4)左利きのCBの獲得
一方、同日付の『コリエーレ・デッロ・スポルト』は、「フランク、零点」という大見出しで、3バックの採用、メデルのレジスタ起用、選手交代の失敗(ペリシッチ投入の遅れ、ヨベティッチよりもパラシオを優先)などを厳しくダメ出ししている。
母国オランダでは、これまでのキャリアにおける実績と名声もあって、批判はされてもそれなりのリスペクトを受けてきたであろうデブールにとっては、マスコミから集中砲火を浴び、それが次の試合まで1週間続くというストレスフルな状況は、おそらく初めての経験だろう。
今週末に行なわれる第2節パレルモ戦の後は、国際Aマッチウィークのため、3節まで2週間空くことになる。もし、パレルモ戦でも結果を残せなければ、さらに長い時間、彼は厳しく悪意に満ちた非難の嵐に見舞われることだろう。
これは、期待よりも疑問が大きい状況で迎えられた監督が避けがたく経験する、一種の「洗礼」である。
近年のインテルでも、スタート時点でこれを乗り越えられなかったラファエル・ベニテス、ジャンピエロ・ガスペリーニといった監督は、クリスマスを待たず解任の憂き目に遭い、一昨シーズンには就任2年目のワルテル・マッザーリも似たような状況でチームを追われた。
果たしてデブールは、この苦難を乗り切って結果を残し、マスコミとサポーターの評価と信頼を勝ち取ることができるだろうか。
文:片野 道郎
【著者プロフィール】
かたの・みちお/1962年生まれ、宮城県仙台市出身。1995年からイタリア北部のアレッサンドリアに在住し、翻訳家兼ジャーナリストとして精力的に活動中だ。カルチョを文化として捉え、その営みを巡ってのフィールドワークを継続発展させている。『ワールドサッカーダイジェスト』誌や当サイトでも、ロッシ監督とのコラボによる戦術解説や選手分析が好評を博す。