かといって、他の主力が新たな両主役の裏でくすんでいるわけでもない。好例がウェイン・ルーニーだ。
PKもイブラヒモビッチに譲っているが、右外まで開いての完璧なクロスでサウサンプトンからの先制点をアシストした姿が、名脇役として貢献する意気込みを窺わせた。キャプテンとしてプライドを維持させている点は、モウリーニョの巧妙さとも言える。
その新監督は、マンチェスター・U新監督就任に際してファーガソンから「雨傘と、いつものワインを持って来るように」と言われたという。モウリーニョは古巣チェルシーの監督時代、ホームゲームだった初対決でクラブがワイン通のファーガソンの口に合わないボトルを用意した「失礼」を恥じて以来、母国産赤ワインの年代物をオールド・トラフォードに持参するのが仕来りだったのだ。
モウリーニョは「まだ素晴らしいと言えるレベルではないが、少なくとも過去2、3年との違いは明らかなはずだ」と語っている。ヴィンテージ風の魅力ある「レッズ」を自作して、ファーガソンを喜ばせる日も遠くはなさそうだ。
文:山中忍
【著者プロフィール】
山中忍/1966年生まれ、青山学院大学卒。94年渡欧。イングランドのサッカー文化に魅せられ、ライター&通訳・翻訳家として、プレミアリーグとイングランド代表から下部リーグとユースまで、本場のサッカーシーンを追う。西ロンドン在住で、ファンでもあるチェルシーの事情に明るい。
