今季の長崎は2023年のFC町田ゼルビアのようなぶっちぎりの強さを見せると思われたが、シーズン途中に下平隆宏監督から高木琢也監督へと指揮官交代の大鉈が振るわれた。第19節の時点では、首位のジェフユナイテッド千葉と勝点10差の８位。そこから11月２日の磐田戦で苦杯を喫するまで16戦無敗というV字回復を見せ、自動昇格をもぎ取ったわけだが、その過程での山口の存在感はやはり絶大だった。
「勝負に徹することができなかった最初の時期と、ある程度うまくいかなくても勝負に徹する戦い方ができるようになった今を比べると、すごく大きな変化だったかなと思う。前半戦は『自分たちがこうやりたいよね』みたいなものに、とらわれすぎていた。失点も重ねたし、勝ちを拾えなかった。
そこから高木さんが監督になり、本当に勝ちにこだわるというのが強くなって、勝ちながら修正していけた。そこはすごく良かったのかなと思います」と、キャプテンも“勝利第一”の中で自身がやるべきことを突き詰めていったという。
若いメンバーに大きな影響を与えたのも確かだろう
それが高木体制移行後の自身の３得点という結果にも表われている。「蛍君は中盤でゲームを作れて、ボールを奪いながらゲームを締められる。そのうえで、３人目としてフラフラと前に入ってきて点を取れる」と前出の安間監督も絶賛していたが、得点意欲が強まったのは紛れもない事実。徳島戦の翁長のゴールにつながった起点のパス出しも、山口らしい“得点からの逆算”が見て取れた。
試合を読む力や戦術眼も卓越したものがあり、彼の一挙手一投足が若いメンバーに大きな影響を与えたのも確かだろう。
こうして何とか「最低ノルマ」は達成した山口。36歳になる2026年は再びJ１に参戦することになる。かつて共闘した神戸の大迫勇也や酒井高徳、古巣セレッソ大阪の香川真司とも対峙することになるだろうが、そこで山口はスケールアップした姿を見せられるのか。長崎のJ１定着に貢献できるのか。挑戦はまだまだ続いていく。
取材・文●元川悦子（フリーライター）
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試合を読む力や戦術眼も卓越したものがあり、彼の一挙手一投足が若いメンバーに大きな影響を与えたのも確かだろう。
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