【仙台】主将とルーキーの物語。富田晋伍と小島雅也が築く理想的な上下関係

カテゴリ:Jリーグ

古田土恵介(サッカーダイジェスト)

2016年08月20日

「悔いの残らないように、自分が少しでもフォローできればと」(富田)

富田はルーキーイヤーに小島と同じく左SBで出場機会を掴んだ。その時の経験を活かして後輩にアドバイスを送るとともに、よくフォローしていた。(C) J.LEAGUE PHOTOS

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 そんな小島を観察していると、気になる場面が目に飛び込んできた。前半終了の笛が鳴った後、ロッカールームに引き上げてくる選手たちのなかで、主将の富田晋伍がなにかを語りかけている。それについて富田に水を向けると、少し照れくさそうにしながらその理由を語ってくれた。
 
「アドバイスというより、なにかやりにくいことはあるかなと思って。まずは前半を戦ってみて、どう考えているかを聞きたかった。自分も1年目に左SBをやらされて、テンパった部分もあったから……」
 
 自身のルーキーイヤーとなる2005年に、当時の都並敏史監督に大抜擢されて同ポジションでプレーしている。もちろん信頼の証を腕に巻いている責任感も、中盤の底でバランスを取らなければならないという考えもあっただろう。だが、過去の自分と似た境遇に立たされた後輩を、放ってはおけなかった。
 
「相手の右サイドハーフ、伊東選手に『アタックしにくい』と言っていたので、『俺とCBに入っているヒロがカバーするから思い切り行け』と伝えた。プロ1年目の選手がリーグ戦に出場するのはとても良い経験になる。本人はたぶんかなり悔しいと思いますけどね」
 
 よりキャプテンマークの似合う男になった――。主将を任された昨季から、判定に不服があれば主審に詰め寄って説明を求め、時には大声を出してチームを鼓舞していた。それでも、背中で仲間を引っ張るタイプというイメージのほうが強かったのではないか。その殻を突き破ったように思う。
 
「試合に出場する選手は責任を持って戦うことが大前提。そのなかで、若い選手と年数を重ねた選手で経験の差が出るのは当たり前だし、そのなかで少しでもプレーしやすいようにしてあげたかった。悔いの残らないように、自分が少しでもフォローできればと思って今日のゲームに臨んでいましたから」
 
 怪我人がふた桁を超え、若手に頼らなければならない状況が増えた。途中交代だが、2年目の茂木駿佑と西村拓真も出場している。出番はなかったが、1年目の常田克人と差波優人もベンチ入りを果たしている。
 
 渡邉監督の方針や富田ら主力の姿勢を鑑みると、クラブの未来は明るいのではないだろうか。なぜなら、チャレンジ&カバーをピッチ内外で実践しているからだ。時に厳しく、時に優しく、年長者がどう振る舞うべきかを心得ている。
 
 今節・大宮戦を予想するに、小島はスタメンから外れる可能性が高い。だが、決して下を向かないはず。そして、今の環境に甘えもしないだろう。
 
「次にチャンスがあればチームの勝利に貢献できるプレーをしたい」。
 
 ありきたりかもしれないが、そんな言葉を残した小島から、確かな成長と頼もしさが感じられた。
 
取材・文:古田土恵介(サッカーダイジェスト編集部)

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