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【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』其の八十四「 “インテンシティー”の誤った解釈から生じる危険」

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2016年08月16日

ボールをどう扱うべきか――それこそが骨子となるべきである。

最近では選手個々の走行距離が発表されるが、数値そのものではなく、それが試合の結果や内容、チームの出来にどれほど影響を与えたかが重要だ。 (C) Getty Images

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 強さ、速さ、というのは伝わりやすいものだが、とても表面的なものでもある。
 
 例えば、もてはやされてFC東京に入団し、今回に名古屋グランパスへレンタル移籍したハ・デソンは、典型的なフィジカル・インテンシティーの選手と言えるだろう。パッと見て、彼はダイナミックな選手に映るかもしれない。
 
 しかし、一方でプレー判断のスピード、タイミングに難があるため、彼自身が局面を打開できることはあっても、周り全体の動きは詰まってしまう。これはボランチとしてトップレベルで活躍するには致命的である。
 
 スピードがもてはやされている場合も、危険な匂いがする。短距離ランナーのようなスピードが活かせる場面は、トップレベルのフットボールゲームではあまり多くない。
 
 速く走るよりも、迅速に適切なポジションを取る、というインテリジェンスの方が差をつける要素となる。“地の利”を得たら、少々のスピードの差は簡単に転んでしまうのが、プロフットボールなのだ。
 
 スプリント数や走行距離で出てくる数字は、ひとつの目安にはなるものの、専門家が囚われるべきものではない。
 
 おそらくインテンシティーの高さは、チーム全体の戦い方で語るべきだろう。
 
 例えば、ホルヘ・サンパオリ監督(現セビージャ監督)はチリ代表の戦闘力を著しく向上させた。マンマークに近い守備で1対1の決闘を制することによって、ボールを奪った展開から、鋭くゴール前に迫った。
 
 好機と捉えたら、5人がバイタルエリアに殺到。連係のなかで絞り出されるインテンシティーは、惚れ惚れするほどだった。
 
 一方で、正しいタイミングを掴んでいないインテンシティーは、退屈かつ無為なものである。よく、「チームが機能していない時ほど、イニエスタ(バルセロナ)の走量は増える」といわれるが、走量が増えることは、必ずしも良性のインテンシティーではない。
 
 フィジカル・インテンシティーをフットボーラーとしてのクオリティーに落とし込むと、ミスリードが生まれるだろう。
 
 あくまで、ボールをどう扱うべきか――。その「プレー強度」こそ、骨子とするべきなのだ。
 
文:小宮 良之
 
【著者プロフィール】
小宮 良之(こみや・よしゆき)/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『おれは最後に笑う』(東邦出版)など多数の書籍を出版しており、2016年2月にはヘスス・スアレス氏との共著『「戦術」への挑戦状 フットボールなで斬り論』(東邦出版)を上梓した。
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