「あの屈強な相手にも、慎三さんらしい得意のプレーが通用することを証明してくれた」。
武藤は2ゴールを奪い結果を残せたことに安堵しながらも、反省点の多いパフォーマンスに納得していなかったのだ。
「一時は決して調子が悪いとは言えない試合もあったけど、10試合ゴールを奪えない時期があった。でも、こうして調子が悪くても取れてしまうこともある。だからこそ、取れる時に、どんどん取りたい。もちろん、そこだけにこだわらず、もっとプレーの質を高めていかなければならない」
そう武藤は反省点を挙げた。さらにチーム状況と結び付けて、次のようにも続けた。
「僕自身のプレーは、ミスも多くて、決してベストと言える出来ではなかった。でも、こういう時こそ、ゴール前に詰めていると、ボールがこぼれてくるものなのかもしれない。(9試合負けなしについて)チームとしての質が上がってきている。だからこそ、僕もクオリティを高めないといけない」
また、リオデジャネイロ五輪を戦う同僚の興梠のプレーについて(取材はナイジェリア戦の翌日)、「あの大舞台でチャンスが来た時に、しっかりPKを決めてしまうのは流石。ナイジェリア相手に、身体を張ってボールを奪われずにしっかりキープしていた。あの屈強な相手にも、慎三さんらしい得意のプレーが通用することを証明してくれた。僕らにとっても自信につながるし、かなり刺激を受けます」と、頷いて語った。
そして興梠へのメッセージを求められた武藤は、真剣な表情で短い言葉に想いを込めた。
「日本のためには、ブラジルでもう少し頑張ってほしいですね。レッズは、大丈夫です」
CF興梠、リベロの遠藤航という攻守の柱がリオ五輪参戦のため不在のなか、浦和は試行錯誤しながらも結果を残している。これで9試合負けなし。第2ステージの勝点19は首位の川崎と並んだ。年間勝点も52に伸ばし、川崎を5差で追走する。
なにより武藤自身のこの2ゴールが、言葉では表現し切れないたくさんの意味を込めた、興梠への最高のメッセージになったはずだ。
取材・文:塚越 始(サッカーダイジェスト編集部)