新天地では、加入１年目からキャプテンに任命された。任された役割は明確だ。「チームを強くしてくれ」。社長の想いを胸に、日々の練習から「かなり厳しくやっていたし、（周りの選手にも）強く要求していた」と山田は振り返る。

　しかし、J１、J２を知る男の目には、J３というカテゴリーならではの課題も映っていた。

「まだ昔の僕みたいな人は多いのかなという気はします」

　かつて自身もプロ入り直後、浦和時代の先輩・田中達也から「もっと本気になれる」と指摘されながら、当時はその真意に気づけなかった。その経験があるからこそ、モチベーション維持の仕方、若さゆえの考えを持つ選手たちの姿に過去の自分を重ねる。

「多分、田中達也さんが僕にしてくれた時の状況なんだろうなって。『本気でやってるよ』って、当時の僕みたいに思っているとは思う」

　コンディション不良で今季、ここまでリーグ戦の出場はわずか２試合のみ。ピッチに立てないもどかしさもある。「（チームメイトに）チクチク言ってるのに、試合に出てないじゃんって、たぶん思われたりもしていますけど、僕の中でそれは関係ない」。批判は覚悟のうえだ。自らを奮い立たせるのは、このチームを良くしたいという純粋な情熱にほかならない。

「僕を必要としてくれたこのチームのために、このチームを少しでも良くしたい。プレーできてない時も少しずつ変えていかないといけない」
 

　チームは現在、22節終了時点で20チーム中19位。J２復帰という目標の前に、まず残留争いという厳しい現実に直面している。山田は冷静に足もとを見つめる。

「今はもう昇格よりも、残留争いを脱するってことが第一の目標。そこを脱出できるように、みんなで切磋琢磨していきたい」

　日々の積み重ねが、未来を創る。その信念は揺るがない。

「一日一日の練習でしかチームは成長できないと思うので、その一日一日を本気で過ごしていきたい。僕自身もまだまだ成長したいと思うので。そういう姿勢を見せていけたらなと思っています」

　一度は消えかけた情熱の炎を再び燃やし、山田は新たな挑戦の地で、チームのため、そして自分自身の成長のために戦い続ける。

取材・文●手塚集斗（サッカーダイジェストWeb編集部）

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