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【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』其の八十「良い守備が良い攻撃を作り出す――。その意味で先日の城福監督の采配は……」

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2016年07月22日

城福監督の選択は、戦いの法則に従えば下策だった。

柏戦で1点を返すために橋本(37番)をSBに下げる攻撃的采配を見せたFC東京の城福監督。しかし、これによって悪くなかった攻撃のリズムが消え、結局はゴールが奪えなかった。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 攻撃と守備のバランスは紙一重だ。
 
「攻撃的に戦う」と鼻息荒く挑むのは悪いことではないが、そういう短絡的な目論見は、裏目に出ることが多い。なぜなら、攻守の均衡が崩れた状態では、良い攻撃は成立せず、むしろ守備が乱れてしまい、相手の攻撃に晒されることになるからだ。
 
 リードされた展開で、守備的な選手に代えて、攻撃的な選手を投入したときは、攻撃と守備の不均衡が顕著に出るかもしれない。
 
 例えば、Jリーグ・2ndステージ4節のFC東京対柏レイソル戦(7月17日)。1点のビハインドを背負うFC東京は、後半途中に柏を追い込みつつあった。相手が肉体的に消耗し、全体の陣形が下がったことで、東京は自然と攻勢に出た。橋本拳人、中島翔哉らが両サイドからぐいぐいと攻め立てていた。
 
 追いつくのは時間の問題のように見えたが、67分だった。FC東京の城福浩監督はさらに攻撃色を強めようとしたのか、左SBの徳永悠平を下げて攻撃的MFの河野広貴を投入。サイドハーフだった橋本を右SBに下げ、右SBだった室屋成を左SBに回した。
 
 これは戦いの法則に従えば、下策だった。
 
 事実、その交代よってそれまでの攻撃の形が消滅。受け身になった柏を相手に優勢に戦ったものの、攻めきれなかった。結局、FC東京は0-1のまま敗れた。
 
 前の枚数を増やしても、攻撃力向上には直結しない。それは自明の理だった。なぜなら、攻撃の選手はお互いがリズムを合わせるのにも、馴染むのにも時間がかかる。前につんのめるだけで、攻撃を練るビルドアップも雑になり、まるで車の空吹かし状態になるのだ。
 
「良い守備が良い攻撃を作り出す」
 
 攻撃に比重を置くことによって、攻撃力が高まるわけではないのである。
 
文:小宮良之
 
【著者プロフィール】
小宮良之(こみや・よしゆき)/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『おれは最後に笑う』(東邦出版)など多数の書籍を出版しており、2016年2月にはヘスス・スアレス氏との共著『「戦術」への挑戦状 フットボールなで斬り論』(東邦出版)を上梓した。
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