インテルの「チャイナ・マネーでの爆買い」は夢物語……。パイエ獲得も空想でしかない

カテゴリ:移籍情報

片野道郎

2016年07月19日

補強はローコストの選手にターゲットを絞るしかない。

移籍金ゼロで獲得したこのジャネルなど、インテルの今夏補強はローコストの選手に限られそうだ。(C)Getty Images

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 新シーズンは最終的な収支をトントンにすることが求められているため、ハードルはさらに高くなる。もしチャンピオンズ・リーグに出場していれば、UEFAからの分配金などで最低でも3000万ユーロの収入増を見込めた。
 
 しかし、インテルが新シーズンに出場するヨーロッパリーグ(EL)では、仮に決勝まで勝ち進んだとしても、その半分程度がいいところである。
 
 それを前提に試算してみよう。仮に新シーズンの売上高とクラブ運営コストが15-16シーズン並みだと仮定して単純計算すると、夏と冬の移籍収支を7500万ユーロの黒字にしなければならないという勘定になる。
 
 ELで上位進出すれば1000万ユーロ(約12億円)前後の収入が見込まれ、蘇寧グループによる買収で中国にマーケティングの市場が拡大することなどを考えれば、1000万ユーロ程度の売上高増も期待できそうだ。
 
 しかし、この楽観的な見通しに立ってもなお、収支をトントンにするためには移籍収支でおよそ5500万ユーロ(約66億円)を稼がなければならない。
 
 5500万ユーロというのは、マウロ・イカルディ、サミール・ハンダノビッチ、マルセロ・ブロゾビッチ、ジェイソン・ムリージョといった主力クラスを2人売却しなければ手に入らない金額である。
 
 そしてその売却益は、新戦力獲得ではなくクラブの赤字を穴埋めするために使われるのだ。大物選手の獲得どころではない。
 
 ここまでの補強は移籍金ゼロのエベル・バネガ(セビージャから)とジャネル・エルキン(フェネルバフチェから)という事実が証明する通り、今夏の補強は基本的にフリートランスファーやレンタル、そして安価な選手にターゲットを絞るしかない。
 
 一部のメディアでは、新オーナーの蘇寧グループが保有する中国スーパーリーグの江蘇蘇寧がトゥーレ・ヤヤ(マンチェスター・シティ)などビッグネームを獲得し、インテルにレンタルするという可能性も取り沙汰された。
 
 しかし、これは単に記者の思いつきレベルの話でしかなく、当事者たちが具体的に検討しているという情報はまったくなかった。実際、中国の移籍市場が閉まる7月15日までに、そんなディールはひとつも成立しなかった。
 
 いずれにせよ、たしかなのは今回の買収劇が今夏のメルカートに劇的な変化をもたらす可能性はないということ。インテルにとっては「買い」よりも「売り」の方が重要なセッションになるのは間違いない。
 
文:片野道郎
 
※『ワールドサッカーダイジェスト』2016年7月21日号より加筆・修正
 
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