確かに、守るべき時間帯と攻める時間帯のメリハリをしっかりつけて、チームとして一体感を持って戦ったところは、岡山の方が鹿島を上回っていたと言っていい。数少ないチャンスをエース格の江坂が決めたことも、チームを大きく活性化するはずだ。

「ゴールで勢いをもたらすのは、自分としてもやりたいこと。それでチームが勢いづいて、勝ちにつながるのが一番。そこを目ざしつつ、与えられたタスクの中で結果を残していきたいと思います」と本人もゴールの上積みに強い意欲をのぞかせたが、守備第一というベースは貫いていく構えだ。

　それをしなければ、このチームでは輝けない。今季に才能を大きく開花させた佐藤、奮闘の目立つ木村太哉にしてもそうだが、岡山アタッカー陣から“フォア・ザ・チーム精神”が色濃く出ているところは、高く評価すべきだろう。

　一時の苦境を脱し、良い方向に進みつつある岡山。彼らに力強い援軍が加わったことも忘れてはいけない点だ。

　その人物とは、５月末から現場入りした大槻毅コーチ。筑波大時代に共闘した木山監督とタッグを組んで、より細部を突き詰めているという。
 

「大槻さんとは浦和では被っていないんですけど、本当に細かくコミュニケーションを取ってくれる方。監督からは直接伝えにくい部分もあると思いますけど、大槻さんが入ってうまく選手と話しながらやってくれるんで、練習のクオリティは確実に上がりましたね。

　セットプレーの動きやタイミング、スローイン１つにしても、大槻さんが来て、突き詰めてくれたことで良くなっています。（前節の横浜F・）マリノス戦の決勝点なんかも大槻さんがデザインした形で、相手のマークのズレを生んでゴールが生まれた。オプションも増えている。良い影響を与えてくれていると思います」

　江坂も前向きに話していたが、こういった化学変化もチームが前進していくうえで必要だ。鹿島という高い壁を破った岡山はここからどのような変貌を遂げていくのか。いずれにせよ、大目標であるJ１残留・定着にまた一歩前進したのは間違いないだろう。

取材・文●元川悦子（フリーライター）

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