「このチャンスをモノにできなければ、佐野に追い上げられる」という危機感も強いのではないか。ご存じの通り、佐野は今季のブンデスリーガ１部で全34試合に先発。デュエル勝利数４位という目覚ましい結果を残している。

　本人は「マインツでやっていることをそのまま代表で出せるわけではない」と慎重なスタンスを崩していないが、実績ある年齢の近い選手がすぐ近くにいるのだから、藤田にはプレッシャーがかかる。それを跳ねのけ、堂々としたパフォーマンスを見せることが重要だ。

　おそらく佐野は次の10日のインドネシア戦で出番が与えられるのではないか。遠藤が連続先発の可能性もあるが、攻撃的な鎌田と組ませてみるのも一案。佐野がドイツで積み上げてきたボール奪取力や対人守備を前面に押し出し、次々とボールを刈り取ってくれれば、鎌田は自由自在に動いて攻めの起点になれる。この２人が新たなコンビネーションを築いてくれれば、森保ジャパンの新たなオプションになりそうだ。

　初代表の熊坂はすぐに出番を得るのは難しいかもしれないが、国内組の彼には７月のE-１選手権というもう１つのアピールの場がある。森保監督の中にも「熊坂には今回、代表のコンセプトを理解してもらって、韓国で主力としてチームを引っ張ってほしい」という思惑があるかもしれない。
 

　そこで実績を積み上げることができれば、2022年カタールW杯行きを掴み取った相馬勇紀（町田）や町野修斗（キール）のような成功ロードを歩むことも夢ではない。今回はしっかりと足場固めをすることから始めてほしい。

　いずれにせよ、代表での実績が少ない藤田、佐野、熊坂の３人にとってはこの６月シリーズが今後への分岐点になりそうだ。どれだけ出場時間が与えられるかは、個々によって異なるだろうが、それを確実にモノにしなければ、2026年W杯への道は開けてこない。

　チームの仕事を遂行しつつ、自分のストロングを要所で出すこと。彼らはまずはそこに集中すべきである。

文●元川悦子（フリーライター）

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