平河が高く評価されているのは、クラブがシーズン途中で完全移籍のオファーを提示したことでも分かる。レンタル期間は１年だったが、完全移籍の３年契約を提示。２月24日、クラブは平河と28年夏まで契約を結んだと発表した。

　平河としては「夏のタイミングで契約が来るかなと考えていた。この１年で結果を残さないと、完全移籍はもらえないと思っていた」と明かし、あくまでも今季の成績次第で、完全移籍か否かの判断がなされると考えていた。しかし、シーズン途中の２月に契約を交わした。前倒しのオファーは評価の表われであるのと同時に、クラブ側の配慮もあったという。

「初めての海外挑戦ということで、チームとしても（完全移籍の契約で）落ち着いてほしいという意向があったと思う。昨夏に町田から移籍し、パリ五輪もあった。この１年半（休みなく）ずっとプレーしている。そういう事情も踏まえて、このタイミングでオファーしてくれたのかなと。クラブとしては、チャンピオンシップやチーム戦術に慣れていってほしいと。それに加え、言語や環境にも難しさを少し感じているので、そこにも慣れてほしいという話をされました」

　平河はサインする前に「色々考えたところもあった」と言うが、イングランド挑戦の道を選んだ。

「ひとつ縁だと思いました。スタメンから外れ、チームの核としてまだそんなに出場できてない状況で、この条件を出してくれた。自分を評価してくれているとの捉え方もできます。自分としても、選手としてもうひとつ成長できる良い機会だと思った。ここでしか得られない経験を、この８か月で積んだ。日本に帰るよりは、難しい状況で壁に当たらないと成長できないとも思っている。そういう意味で決めました」

　平河が戦うイングランド２部のチャンピオンシップは、「試合展開の速さ」と「当たりの激しさ」で知られる。実際にプレーする平河の目には、どんなリーグに映るのか。
 

「自分はJ２、J１とやってきて、今チャンピオンシップでやっています。大げさに言えば、競技が違うというか...。別競技みたいな感覚はちょっとあります。どちらの方が良いという話は置いておいて、まったく別物かなと感じています。

（筆者：具体的に、どのあたりが違いますか？）

「よく感じるのは、（対人プレーで）足が伸びてくる。後ろ向きに対しての激しさも、日本にはない感覚です。基本的に、アジリティとスピードの基準も高い。そのあたりは自分が武器にしているところなので、ここでそう感じるということは（凄いということ）。ここでやれば、プラスになると捉えています」

　サムライ戦士の目標は、世界最高峰の舞台プレミアリーグである。「一喜一憂せず、自分のペースでしっかり地に足を付けてやりたい」と語りつつも、次のように言う。

「プレミアリーグにいつか行きたいという気持ちが強い。チャンピオンシップは、プレミアに１番近いリーグ。そこでプレーできる強みを感じています。ここが１番自分のためになるリーグなのかなと思ってます」

　その平河がイングランドでさらなる成長を誓う理由のひとつに、昨夏に行なわれたパリ五輪があった。

（後編に続く）

取材・文●田嶋コウスケ

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