とはいえ、若手を優先的に起用しているのではない。これはチーム内での健全な競争の結果である。
 
　下平監督は試合で結果を残した者、練習で好プレーを見せた者に試合に出るチャンスを与え、そこには若手、中堅、ベテランの垣根はない。茨田陽生は「チーム全体で良い競争ができています」と、その現状を話している。
 
　そういう意味では、下平レイソルは往年の“ネルシーニョ流”と“アカデミースタイル”のハイブリッド化とも取れるだろう。
 
　チーム内に競争意識を植え付け、「ボールを保持する」という柏がクラブとして抱く哲学を貫くと同時に、球際の強度、ボールを奪いにいく迫力と、結果を得るためにリアリズムを求める。
 
　例えば、直近の鹿島戦で最終ラインに鎌田次郎、中谷、増嶋竜也、中山のCBタイプを４人並べてカイオ対策を徹底し、今季は右SBにコンバートされていた伊東を本職のアタッカーに戻したが、その狙いが見事に的中。かつてのネルシーニョ監督を彷彿とさせる采配だった。
 
　最後に特筆すべきは、若い選手たちが公式戦５連勝にも浮ついた様子を一切見せず、地に足をつけて現状を冷静に見つめている点だ。
 
「連敗したら、この連勝はすぐにチャラになる」（中川）
「まだまだ課題は多いし、できていないことのほうが多い」（中山）
 
　好調により、対戦相手のマークはより厳しくなるだろう。ただ、この先こそ真価が問われることを、柏の選手たちは十分理解している。
 
取材・文：鈴木潤（フリーライター）