ハウ監督の「ダーク・アート」には要注意?
長く続いた低迷を脱するきっかけとなったのがオーナーの交代だ。ビジネス優先でチーム強化に関心がなかった悪名高きマイク・アシュリーの手から、サウジアラビアの政府系ファンドがクラブを買い取った。この体制一新でチームは文字通り生まれ変わった。
サウジ政府が運用する『PIF(パブリック・インベストメント・ファンド)』というこのファンド、なにが凄いって、資金力が桁違いだ。資産額は5140億ポンド(約85兆円)。これは全世界の政府系ファンドの中で最大だ。
ただ、彼らは知的で理性的だった。チェルシーの前オーナーや現オーナーのようにカネの力でプロセスをすべてすっ飛ばすやり方はしないで、ブロックを一つひとつ積み上げるように地に足をつけたチーム強化に取り組んでいる。大躍進の現陣容を見ても、世界的なスーパースターはひとりもいないし、推定市場価格の総額はリーグ7位でしかない。その気になれば「ビッグ6」も簡単に凌駕できるのに、そこにも割って入らない7位だ。
もっとも、派手な動きを避けているのは、サウジ資本の参入に反対する声が根強いからでもある。国内の人権問題などでサウジアラビア国家は国際社会から叩かれていて、ニューカッスル買収についても紆余曲折があったのは周知の事実だ。これ以上の批判を招かないようにと、頭を下げて目立たないよう振る舞っているわけだ。
【動画】「奥さんといるとこ初めて見た」と反響!三笘と妻クリアさんの貴重な夫婦同伴姿
サウジ政府が運用する『PIF(パブリック・インベストメント・ファンド)』というこのファンド、なにが凄いって、資金力が桁違いだ。資産額は5140億ポンド(約85兆円)。これは全世界の政府系ファンドの中で最大だ。
ただ、彼らは知的で理性的だった。チェルシーの前オーナーや現オーナーのようにカネの力でプロセスをすべてすっ飛ばすやり方はしないで、ブロックを一つひとつ積み上げるように地に足をつけたチーム強化に取り組んでいる。大躍進の現陣容を見ても、世界的なスーパースターはひとりもいないし、推定市場価格の総額はリーグ7位でしかない。その気になれば「ビッグ6」も簡単に凌駕できるのに、そこにも割って入らない7位だ。
もっとも、派手な動きを避けているのは、サウジ資本の参入に反対する声が根強いからでもある。国内の人権問題などでサウジアラビア国家は国際社会から叩かれていて、ニューカッスル買収についても紆余曲折があったのは周知の事実だ。これ以上の批判を招かないようにと、頭を下げて目立たないよう振る舞っているわけだ。
【動画】「奥さんといるとこ初めて見た」と反響!三笘と妻クリアさんの貴重な夫婦同伴姿
もう何年も虐げられてきたジョーディー(ニューカッスル・ファン)は、CLに手が届こうかという大躍進に最初は戸惑いながらも、もうすっかりご満悦だ。先日、パブで出会った観戦帰りのファンの男性も威勢がよかった。リーグカップ2回戦のトランメア(4部)とのアウェーゲームを除いて、ホームもアウェーもすべての試合に足を運んでいるという40代のその彼は、もつれた舌でこう語った。
「来シーズンはチャンピオンズリーグがあるから、そのための補強が必要。サウジも財布の紐を緩めて、ビッグタレントを取りに行く。いまのスカッドじゃ戦えないから。使えるのは5人、それ以外の6人は入れ替えないと」
その5人と6人の名前が知りたくて続きを促す。でも、もうそれ以上は聞けなかった。彼はご機嫌で、別の誰かと別の話を始めてしまった。
実は、このニューカッスル、あまり評判がよろしくない。というのも、姑息な手段を使ってくるからだ。例えば、こうだ。コーチが試合中、ずっと第4審判にピッタリとくっついて、耳元で囁き続ける。
自軍の選手がファウルを受けたら「いまのはイエローだろう」、逆にファウルを取られたら「いやいや、シミュレーションだ」という具合にやる。それで笛が変わるはずはないのだが、どうにも小賢しいというわけだ。エディ・ハウ監督のこの「ダーク・アート」には注意が必要だと、ファンもメディアも批判的だ。
ジョーディーの彼は、また別の誰かとグラスを合わせて盛り上がっている。「グッドラック」とその背中に投げかけて、僕は店を出た。
文●スティーブ・マッケンジー(サッカーダイジェスト・ヨーロッパ)
Steve MACKENZIE
スティーブ・マッケンジー/1968年6月7日、ロンドン生まれ。ウェストハムとサウサンプトンのユースでプレー経験がある。とりわけウェストハムへの思い入れが強く、ユース時代からのサポーターだ。スコットランド代表のファンでもある。大学時代はサッカーの奨学生として米国で学び、1989年のNCAA(全米大学体育協会)主催の大会で優勝した。現在はエディターとして幅広く活動。05年には『サッカーダイジェスト』の英語版を英国で手掛け出版した。
※『ワールドサッカーダイジェスト』2023年5月4日号より転載
「来シーズンはチャンピオンズリーグがあるから、そのための補強が必要。サウジも財布の紐を緩めて、ビッグタレントを取りに行く。いまのスカッドじゃ戦えないから。使えるのは5人、それ以外の6人は入れ替えないと」
その5人と6人の名前が知りたくて続きを促す。でも、もうそれ以上は聞けなかった。彼はご機嫌で、別の誰かと別の話を始めてしまった。
実は、このニューカッスル、あまり評判がよろしくない。というのも、姑息な手段を使ってくるからだ。例えば、こうだ。コーチが試合中、ずっと第4審判にピッタリとくっついて、耳元で囁き続ける。
自軍の選手がファウルを受けたら「いまのはイエローだろう」、逆にファウルを取られたら「いやいや、シミュレーションだ」という具合にやる。それで笛が変わるはずはないのだが、どうにも小賢しいというわけだ。エディ・ハウ監督のこの「ダーク・アート」には注意が必要だと、ファンもメディアも批判的だ。
ジョーディーの彼は、また別の誰かとグラスを合わせて盛り上がっている。「グッドラック」とその背中に投げかけて、僕は店を出た。
文●スティーブ・マッケンジー(サッカーダイジェスト・ヨーロッパ)
Steve MACKENZIE
スティーブ・マッケンジー/1968年6月7日、ロンドン生まれ。ウェストハムとサウサンプトンのユースでプレー経験がある。とりわけウェストハムへの思い入れが強く、ユース時代からのサポーターだ。スコットランド代表のファンでもある。大学時代はサッカーの奨学生として米国で学び、1989年のNCAA(全米大学体育協会)主催の大会で優勝した。現在はエディターとして幅広く活動。05年には『サッカーダイジェスト』の英語版を英国で手掛け出版した。
※『ワールドサッカーダイジェスト』2023年5月4日号より転載