【ブンデス現地コラム】ヘルタ・ベルリンの躍進を支えるダルダイ監督と原口元気

カテゴリ:連載・コラム

中野吉之伴

2015年10月22日

堅い絆で結ばれた選手と監督の信頼関係こそがなによりの強み。

加入2年目の原口は崩しの切り札として不可欠な存在に。単独での仕掛けだけでなく、味方との連携からも好機を作り出す。(C)Getty Images

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 攻守両面で存在を誇示しているのが、原口だ。加入1年目の昨シーズンは「自陣深くまで守備に戻らなきゃいけない。だから、走る距離が長くてなかなか前に出ていけない」とこぼしていたものの、ダルダイ監督の戦術に適応したここ最近は「やりやすさを感じている」と言い切るほど自信を深めている。
 
「ゲンキ(原口)はスピードがあって、チャンスの場面にいつも顔を出す」
 
 地元紙『ベルリナー・ツァイトゥング』のインタビューで、スポーツディレクターのミヒャエル・プレーツは原口をそう評している。
 
 今シーズンの原口は主に右ウイングでプレー。単独での仕掛けだけでなく、右SBのヴァイザーとの連携から多くのチャンスを演出している。「(ヴァイザーが)いいタイミングで上がってきてくれる。縦の関係が非常にうまくいっていると思う」と本人も手応えを感じているようだ。
 
 ダルダイ監督が特に評価しているのが原口の貪欲な向上心だ。9月の代表ウィーク明けのシュツットガルト戦(9月12日)後には、こんなエピソードを明かしている。
 
「木曜日(9月10日)に代表戦から戻ってきたゲンキの目を見て、まずこう思った。疲れ切っている、と。私も現役時代にハンガリー代表でプレーしていたから、すぐにわかったよ。スタッフと相談して、シュツットガルト戦はベンチスタートさせるつもりだった。ところが翌日、彼はハードな走り込みの練習を志願してきたんだ。それを見て私は『ゲンキはプレーできる』と確信した。そして、シュツットガルト戦では先発で起用したんだ」
 
 教え子の心意気を汲み取る監督と期待にプレーで応える選手――。堅い絆で結ばれたこの信頼関係こそが、現チームのなによりの強みだろう。
 
 チームとして懸念されるのは、選手層の薄さ。ビッグクラブが相手でも粘って接戦に持ち込めるだけのベースはあるものの、主力が不調に陥ったり、欠場したりすると途端にパフォーマンスが低下する。システム変更で対応するのもひとつの手だが、それに対応できるだけの柔軟性は持ち合わせていない。
 
 主力にアクシデントが生じたときにどう対応するか。この課題を克服できれば、ヨーロッパリーグ出場圏内(5~7位)に食い込んできても不思議はない。それだけのポテンシャルがいまのヘルタ・ベルリンには備わっている。
 
文:中野吉之伴
 
【著者プロフィール】
ドイツ・フライブルク在住の指導者。09年にドイツ・サッカー連盟公認のA級コーチングライセンス(UEFAのAレベルに相当)を取得。SCフライブルクでの実地研修を経て、現在はFCアウゲンのU-19(U-19の国内リーグ3部)でヘッドコーチを務める。77年7月27日生まれ、秋田県出身。

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