去年、私自身がゼロから立ち上がったチームにいたから、余計にそう感じるのかもしれないです。ゼロからチームを作り上げるのって、本当に大変ですよ。時間がいくらあっても足りない。１年じゃどうにもならない。選手の特長をつかんで信頼関係を構築し、異なる価値観を認め合ってチームの色にしていく……という作業は、最低でも３年、４年はかかる作業だなと感じました。

　正直、個人的にですが、ここ最近のなでしこは、過去のなでしこジャパンとの差別化をするために、「ごっそりメンバーを変えすぎたんじゃないかな？」と思っていました。新戦力を迎えることはもちろん大切ですが、一気に変えると、チームの基盤が崩れてしまう恐れがある。チームとしての基盤が全くない状態で、ワールドカップや、去年のオリンピックに臨んでいるようなイメージでした。特に、東京オリンピックでは、実力的にそういう状況にないのに「メダルを目ざす」と言わされてしまったような印象を受けました。
 

　ただ、これは選手だけの問題ではなくて、時代の流れもあるのかなと。昔は女子がサッカーをやるという場合、もっと選択肢が少なくて、やるべきことも明確にしやすい環境だった。

　でも今は選択肢が溢れていて、生き方も多様になった。自由な生き方を求められる時代に変わって、答えを見つけるのがすごく難しい。それは、サッカー界においても同じで、代表を目ざすことだけを目標にするのではなく、自分の理想のサッカー選手としての追求を目的にすることもできる。たとえ日本代表として集まっても、皆が同じ目標に向かっているわけではない部分もあるのかな。

　だからこそ、自分自身が「何でサッカーをしているのか？」「なぜ代表でプレーしたいのか？」「何のために代表でプレーするのか？」という目的をもっと明確にしないと、日々のプレーに対する意識は上がっていかないし、エネルギーも沸かない。そういう根本的なところが、今一番欠けているものだと感じます。具体的に言えば、何のためにワールドカップで優勝したいのか、オリンピックで金メダルを取りたいのか。きちんとその理由と目的を考えられなかったら、パフォーマンスも上がりようがないんです。

　もちろん、自分のためにも、誰かのためにも、タイトルを勝ち取りたいと思っている選手はいます。強くなりたいから海外に出ていく選手たちが増えたのは、その証ですよね。ただ、新しい環境を切り開きたいと自ら日本の外に飛び出していく選手が増えたからこそ、そうじゃない選手たちとのギャップが広がりすぎたのが、今のなでしこなのかな。噛み合わない部分が出てくるのは当たり前なのかもしれません。

　だから、寄せ集めである代表チームで、強い意識を持った選手の分母を上げていくためには、監督の選択も大事だと思います。意識高くやっている選手を選べるかどうかは、その監督の腕にかかっている。すごく重要な要素だと思います。

第２回に続く

構成●サッカーダイジェストWeb編集部

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