武藤がゴールを重ねれば「フンバ」は東京にも飛び火?
フンバのやり方はこうだ。選手たちはまず、ゴール前に半円を描くようにして座る。「柵の上の王様」はゴール裏フェンスによじ登り、拡声器でサポーターに呼びかける。
「Hをくれ!」、「Uをくれ!」、「Mをくれ!」
サポーターはそれに呼応し、H・U・M・B・Aとフンバのスペルを叫んでいく。
最後の「A」まで来たら、ゴール前の選手たちは立ち上がって踊り始め、スタンドのサポーターはそれに合わせて「フンバ、フンバ、フンバ、テーテラ」と歌う。
しかしこの日の王様は、何をどうしたらいいのか分からなかった。だからサポーターが、「Hをくれ!」「Uをくれ!」と代わりに先導したのである。通常のフンバではなかったが、それはそれで味があり、ともかくコファス・アレーナは最高の雰囲気に包まれた。
フンバを終えた武藤は、「何を歌っているのか分からなかった」と打ち明け、「でも、何かマインツのことだと思った」と言った。
鮮烈なパフォーマンスで強烈なインパクトを残した武藤は、マインツファンの心を鷲掴みにしてしまったようだ。この活躍がさらに続けば、フンバはFC東京のスタジアムにまで飛び火するかもしれない。
86分に交代を告げ、万雷の拍手と喝采を浴びながらピッチを下がるという最高の“カーテンコール”を武藤に用意したマルティン・シュミット監督は、みずからも称賛を込めた日本式のお辞儀でこの日のヒーローをベンチに迎えた。
「今日は自分の良いところを見せることができた」と武藤は言った。それはスピードと運動量であると。2つのゴールシーンだけでなく、見せ場はそれこそいくつもあった。ボールを持っていても、持っていなくても、武藤は素晴らしかった。
ハノーファーの経験豊富なセンターバック、マルセロとクリスティアン・シュルツは、俊敏な武藤に対してとても緩慢に見えた。
初めて先発したホームゲームでの活躍と言えば、岡崎慎司もそうだった。加入1年目の2013-14シーズン、そのホームでの開幕戦で、岡崎は古巣シュツットガルトを相手に勝ち越しゴールとなるチーム2点目を奪い、勝利(3-2)に貢献した。
そして岡崎は今夏、2年間で計29ゴールという実績を手にプレミアリーグに渡った。武藤が同じように成功の道を歩んでも不思議はない。ひょっとすると、それ以上かもしれない。武藤が持っているのは、岡崎よりも優れたテクニックなのだ。
文:ラインハルト・レーベルク 「マインツァー・アルゲマイネ新聞」コラムニスト
翻訳:円賀貴子
Reinhard REHBERG
ラインハルト・レーベルク
『ライン新聞』で1987年から27年に渡ってマインツの番記者を務める。現在はフリーで、『マインツァー・アルゲマイネ新聞』のコラムニストを務める一方、監督業を志す指導者に向けたコーチングも行なっている。マインツ出身、57年7月30日生まれ。
「Hをくれ!」、「Uをくれ!」、「Mをくれ!」
サポーターはそれに呼応し、H・U・M・B・Aとフンバのスペルを叫んでいく。
最後の「A」まで来たら、ゴール前の選手たちは立ち上がって踊り始め、スタンドのサポーターはそれに合わせて「フンバ、フンバ、フンバ、テーテラ」と歌う。
しかしこの日の王様は、何をどうしたらいいのか分からなかった。だからサポーターが、「Hをくれ!」「Uをくれ!」と代わりに先導したのである。通常のフンバではなかったが、それはそれで味があり、ともかくコファス・アレーナは最高の雰囲気に包まれた。
フンバを終えた武藤は、「何を歌っているのか分からなかった」と打ち明け、「でも、何かマインツのことだと思った」と言った。
鮮烈なパフォーマンスで強烈なインパクトを残した武藤は、マインツファンの心を鷲掴みにしてしまったようだ。この活躍がさらに続けば、フンバはFC東京のスタジアムにまで飛び火するかもしれない。
86分に交代を告げ、万雷の拍手と喝采を浴びながらピッチを下がるという最高の“カーテンコール”を武藤に用意したマルティン・シュミット監督は、みずからも称賛を込めた日本式のお辞儀でこの日のヒーローをベンチに迎えた。
「今日は自分の良いところを見せることができた」と武藤は言った。それはスピードと運動量であると。2つのゴールシーンだけでなく、見せ場はそれこそいくつもあった。ボールを持っていても、持っていなくても、武藤は素晴らしかった。
ハノーファーの経験豊富なセンターバック、マルセロとクリスティアン・シュルツは、俊敏な武藤に対してとても緩慢に見えた。
初めて先発したホームゲームでの活躍と言えば、岡崎慎司もそうだった。加入1年目の2013-14シーズン、そのホームでの開幕戦で、岡崎は古巣シュツットガルトを相手に勝ち越しゴールとなるチーム2点目を奪い、勝利(3-2)に貢献した。
そして岡崎は今夏、2年間で計29ゴールという実績を手にプレミアリーグに渡った。武藤が同じように成功の道を歩んでも不思議はない。ひょっとすると、それ以上かもしれない。武藤が持っているのは、岡崎よりも優れたテクニックなのだ。
文:ラインハルト・レーベルク 「マインツァー・アルゲマイネ新聞」コラムニスト
翻訳:円賀貴子
Reinhard REHBERG
ラインハルト・レーベルク
『ライン新聞』で1987年から27年に渡ってマインツの番記者を務める。現在はフリーで、『マインツァー・アルゲマイネ新聞』のコラムニストを務める一方、監督業を志す指導者に向けたコーチングも行なっている。マインツ出身、57年7月30日生まれ。