人材的には対応できそうな３バック。メリットは、４枚の最終ラインを３枚にすることで、前に人数をかけられることです。「連係・連動」という森保監督がテーマにしている部分を補強する効果もありそうです。そのためには、攻め込まれても耐えられる、３枚でも守れる守備力は重要です。

　さらに考えるべきは、何のために３バックにするのか、です。

　ワールドカップ本大会では、試合中の局面でいろんな条件が出てきます。私は、現在ベースとなっている「４－３－３」に代わるシステムというよりは、試合中に変化を出す、チームの意識を統一する方法として３バックを活用するのが良さそうだと感じています。

　前述のように人選によって守備的、攻撃的とはっきりと意図を示せますし、試合中に４－３－３から選手の立ち位置を変えることでも対応ができます。

　そこで、システムだけでなく、選手の組み合わせというのも大きくなってくると感じています。選手同士の相性も考慮すべきではないでしょうか。ガーナ戦のような戦いでは、途中出場の前田大然選手が効果を発揮していました。前線からのプレスと、背後を狙うスピードで、ブラジル戦でも一定の貢献があり、自分たちのペースにできる可能性がある。ゲームの終盤で伊東選手と前田選手のスピードがある組み合わせは相手の脅威でもあります。

　人が違えば戦い方も変化して良いのではないでしょうか。個人の特性に合わせた戦い方を選ぶという発想も必要です。チームスポーツとして規律のある戦い方が日本の強みでもあると思います。現在の４－３－３で誰が出ても一定の戦い方でクオリティを保てるようになってきたからこそ、今後は個人の能力を最大限活かせる戦い方を模索すべきです。

　ベースの上に選手の個性を出せるように、試合展開や状況によって対応できるように、戦略的な考え方を深めていってほしいと思います。選手の活かし方はいろいろあると思うので。

　今後は、国内組で参戦予定のE-１選手権や、９月の代表活動を経てワールドカップ本番に向かいます。選手たちにはコンディションを上げながらアピールを続けてほしいですし、チームにはベースとするものに加え、戦い方の幅を広げる方法を突き詰めていってほしいと思います。

【著者プロフィール】
市川大祐（いちかわ・だいすけ）／1980年5月14日、静岡県出身。現役時代は日本代表の右サイドバックとして活躍したクロスの名手。1998年に17歳でA代表デビューすると、2002年の日韓W杯でも活躍。アカデミー時代から過ごした清水ではクラブ歴代3位となる325試合に出場した。2016年に現役引退後は指導者の道に進み、現在は清水エスパルスJr.ユース三島U-13で監督として活躍中。

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