今季のCLファイナルで決勝ゴールを挙げたレアル・マドリーのヴィニシウス・ジュニオール、途中出場したエドゥアルド・カマビンガが同世代ということを考えると、久保が成長曲線を引き上げなければならないのは確か。森保監督も「タケは彼にしかない能力がある素晴らしい選手。だが、成長するにあたって、今は一皮むけないといけない時。現状を乗り越えてくれればまたパワーアップしてくれる」と停滞を認めつつ、奮起を促していた。

　そうやって温かい目で見守ってくれる指揮官に久保は甘えてはいられない。21歳と言えば、2000年のアジアカップで圧倒的な強さを見せてアジア王者に輝いた時の主力である稲本潤一（南葛SC）、高原直泰（沖縄SV）と同い年。稲本はこの１年半後の2002年日韓W杯でもブレイクし、世界の度肝を抜いている。同等、あるいはそれ以上の活躍が求められている久保がこのまま足踏み状態を続けるのは、日本サッカー界にとっても望ましいことではない。

　今の代表で輝くためには、４－３－３と４－２－３－１の両方で一定水準以上のパフォーマンスを示すことが肝心だ。前者の場合はインサイドハーフか右サイドのいずれかで周囲と連係しながら得点に絡むことが求められてくる。

　インサイドハーフであれば、主力の守田と田中碧（デュッセルドルフ）に割って入れるだけの爆発力が必要。他にも原口元気（ウニオン・ベルリン）、柴崎、鎌田大地（フランクフルト）らがひしめいているだけに、普通のプレーをしていても序列は上げられない。右にしても日本のキーマン伊東純也（ヘンク）に堂安が挑む構図。彼らを久保がごぼう抜きするのは容易ではないだろう。
 

　４－２－３－１のトップ下にしても、フランクフルトのEL優勝に貢献した鎌田というライバルがいる。森保監督の鎌田評はここへ来て急上昇しており、昨年９月の中国戦の段階では優位に立ったと目された久保もかなり厳しくなっている。

　各ポジションで難しい立場に立たされるなか、「絶対に久保がいなければダメ」という状況を作り出すためには、決定力の部分を研ぎ澄ませるしかない。リスタートの重要性がより一層高まるW杯を視野に入れ、武器のFKを磨き上げるのも一案だ。

　いずれにせよ、“代表デビューからいまだ無得点”という長いトンネルを抜け出さない限り、カタールでのブレイクは見えてこない。まずは左足首の怪我を治すことが先決ではあるが、６月シリーズからの半年間は久保の先々のキャリアを左右する重要な時期。このタイミングで長い間、待ち望んだ代表初ゴールをぜひ見せてもらいたいものである。

取材・文●元川悦子（フリーライター）

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