こうしてひとまず腰を落ち着け、新居探しを本格化させたが、これがまた簡単にはいかなかった。ラモスがマドリー時代に長く居を構えていたのは、マドリード郊外の閑静なラ・モラレハ地区。パリでも同様の環境を求めていたが、希望の条件を満たす物件は見つからなかった。

　最終的に同じくマドリーでもチームメイトだったアンヘル・ディ・マリアをはじめとした複数の南米出身の選手たちが住むヌイイ・シュル・セーヌ地区ではなく、サン＝ジェルマン＝アン＝レーの練習場に近い、パリの西部の街にある物件に決めた。

　早速引っ越し作業に取り掛かったが、その際にマドリードから疲労回復を高める効果のある高圧酸素カプセルを移設。さらに本格的なジムを併設し、そこでチーム練習とは別に、故障を再発させるたびにコンディションを取り戻すために汗を流してきた。

　そんな新天地で多くのことが思い通りに行っていないラモスにとって貴重な気晴らしになっているのが油絵だ。試合後に興奮で眠れない時にアドレナリンの分泌を抑制する効果があるという理由で、最近始めた趣味の一つだ。Amazonプライム・ビデオで配信されているドキュメンタリーでこう熱っぽく語っている。

「絵画には以前から興味があって、ここ数年、特にハマっている。元々学びながら、自分が上達したり、成長したり感じるのが好きだしね。誰かに自慢したいわけではないし、別にどう思われても構わない。それで悩むことはないし、他人に意見を求めたりする考えもない。ただ単に気分転換のために絵を描いている。自分1人の時間を確保するには最適だしね」
 

　他にも毎日英会話、やや頻度の低いがフランス語会話のレッスンを受講したりと、時間を有効に活用している。ただ、それはあくまでプライベートでの話。もっぱらラモスの頭の中にあるのは、パリでタイトルコレクションを増やすことだ。近いうちに引退することは微塵も考えていない。

　しかもその目標を成し遂げるために、１年前には想像すらできなかったパートナーを見つけた。「すぐに意気投合した」とパリのドレッシングルームに近い情報筋が明かすメッシだ。２人の間には長年キャプテンを務めてきたクラブを不本意な形で去らなければならなかったという共通点がある。今度は共闘しタイトル獲得に燃えているというのだ。

　もっとも、ここまでラモスが故障続きで、ピッチ上で共演した時間は限られる。パルク・デ・プランスでの試合では、メッシとラモスの家族が貴賓席において隣同士に座っているため、子供たち同士のほうがより多く交流しているほどである。

文●ダビド・アルバレス（エル・パイス紙レアル・マドリー番）
翻訳●下村正幸

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