なぜ、カズはカズであり続けるのか――鈴鹿移籍の舞台裏と、何も「変わらない」奇跡

カテゴリ:Jリーグ

牧野真治

2022年01月11日

「他の選手より1センチでも前に進む」ために

プロ生活は37年目に突入。サッカーへの情熱を燃やし続けて、新シーズンも全力で走り抜く覚悟だ。写真:滝川敏之

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 実に17年ぶり、プロ14クラブ目の移籍。昨季のカズは比較的、早い段階から移籍を意識していた。05年から籍を置く横浜FCへの愛着もあるが、プロの選手である以上、出場してナンボ。54歳の選手となれば尚更だ。「試合に出ないことにはゴールはできない。試合に出ることにはこだわりたい」という信念は10代から変わらない。

 そんななか、最も早く動いたのが鈴鹿だった。兄の三浦泰年氏が監督兼GMを務め、出場機会の細かなシミュレーションを含めた提案を受けた。本格交渉も12月7日とクリスマス直前の複数回に及んだ。22年のJ3昇格に向け、明確なビジョンも持ったクラブだった。

 各クラブとの交渉は大阪府内での自主トレと並行して行なわれた。本来ならもっと早く鈴鹿に決定したはずが、内部告発問題が発生し、カズも気を揉んだ時期があった。その間、昨季終了前からオファーを受けた南葛SCをはじめ、J2琉球など続々と獲得に手を挙げた。

 カズは自主トレと並行し、自ら交渉の席に付いた。1日に2クラブと計3時間以上、話す日もあった。最終的に告発問題もクリア。レンタル移籍か、完全移籍か、詳細を詰めるのに時間を要したが、鈴鹿に決着した。カズはサッカー人生を振り返り「ずっとヤスさんの背中を見て来た」と言う。当然、実兄の存在も大きかった。

 むろん、ピッチ上にはいつものカズがいた。今回は自主トレ先が大阪とあって井手口陽介、三浦弦太ら複数の選手が連日、参加を志願し、さながらカズ塾となった。質問されれば何でも答えた。20代前半の選手にボールを奪われれば本気で悔しがり、腕立てや腹筋、体幹トレでは必ず他選手よりも1回多く自身に課した。「他の選手より1センチでも前に進む」ためだ。まさに向上心の塊だった。
 
 なぜ、カズはカズであり続けるのか。「サッカーが大好き。そこが原点。例えゴールしても次の目標ができる。人生はその連続」と言う。だから走り続ける。カズの取材を続けて20年以上たつ。年齢を重ね、白髪は増えた。以前より体重維持のため、多少の脂分も摂るようになったが、サッカーに取り組む情熱、他選手へのリスペクト、試合に出られない時は本気で悔しがり、注目される舞台では必ず爪痕を残す勝負強さはずっと変わらない。

 プロ生活は37年目に突入する。その間、何も「変わらない」奇跡。それこそが、キングたる所以なのだ。

取材・文●牧野真治(スポーツニッポン新聞社)

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