果たして、実りある改革案なのか。原副理事長に問う“ワールドカップ隔年開催の是非”

カテゴリ:Jリーグ

白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

2021年11月15日

選手はボロボロになって選手寿命を縮める

ワールドカップの隔年開催を実現する以上に、大差がつきやすいアジア2次予選の仕組みを変えるほうが先決なのでは? 写真:写真:金子拓弥 (サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

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 価値低下と言えば、現行のワールドカップ・アジア予選。2次予選で大差がつく試合を観ると、「これ、意味あるの?」と思ってしまいます。スリリングさに欠け、サッカーファンの関心を惹けなくなっているのが現状です。隔年開催になれば、そういう試合が増えて、ファン離れが加速するかもしれません。本来見直すべきは、アジア予選のやり方であって、本大会への出場機会を増やすことではないと考えています。

 隔年開催になったとして、日本が強豪国とたくさん戦えるかと言えば疑問符が付きます。ワールドカップ出場国が48に増える2026年大会からは、各グループリーグを3か国で戦います(各組2位までが32か国での決勝トーナメントに進出)。最悪、2試合で終わってしまうわけで、1大会でのゲーム数は従来の大会方式よりも減る可能性があります。地区予選の試合数が倍増する負担に目を向ければ、隔年開催が如何に厳しいかを理解してもらえると思います。

 現状でさえ、選手たちは大へんです。リーグ戦、国内のカップ戦、UEFAチャンピオンズ・リーグやACL(AFCチャンピオンズリーグ)などに加え、代表戦もありますからね。“さらに”となると、彼らはボロボロになって選手寿命を縮める可能性もあります。
 
 ワールドカップの回数を増やせば、クラブのスケジュールを見直さざるを得ません。要は、何を削るか──。そこが重要なテーマになるわけですが、具体的な議論には発展していません。当然と言うべきか、国際プロサッカー選手会も隔年開催には反対していると聞きます。

 これだけの改革案を実現させるなら、それなりの理由、クラブへの配慮など相応の準備が必要です。単に「2年に1回なら盛り上がる」とか、そんな楽観論で選手の心が動くとは思えません。

 果たして、UEFAチャンピオンズ・リーグの試合数を減らしてまで、ワールドカップを隔年開催にする価値はあるか。その議論なしに先には進まないような気がします。実際、この件についてはFIFA対UEFA、CONMEBOLの構図とも言われている部分がありますしね。少なくとも、12月の採決に全てを委ねるのはナンセンスでしょう。

<プロフィール>
原 博実(はら・ひろみ)/1958年10月19日生まれ、栃木県出身。現役時代はFWで早稲田大、三菱重工などで活躍。日本代表歴は75試合・37得点。現役引退後、浦和、FC東京の監督を経て日本サッカー協会で技術委員長なども務めた。16年3月にJリーグの副理事長に就任し、現在に至る。

取材・構成●白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集長)

※本稿は、サッカーダイジェスト11月25日号に掲載された「J’sリーダー理論」の内容を修正・加筆したもの。

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