東京五輪開催でJリーグは一時中断。その間、各チームは戦力補強やミニキャンプ実施など、再開後に向けて準備を進めている。五輪後はいかなる戦いを見せてくれるか。ここでは、J１昇格１年目を戦う徳島ヴォルティスを取り上げる。

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　５勝５分12敗の勝点20、残留圏ギリギリの16位で中断期間へ突入した。しかしながら、未消化試合のあったG大阪が中断期間中に勝点を重ねて浮上。結果、徳島は降格圏からのリーグ戦再開となる。

　ここまでの戦いを整理するとコロナ禍の影響で開幕前の合流が叶わなかったダニエル・ポヤトス監督がシーズン開幕後の４月に合流。そこから本格的な戦術浸透がスタートしたが、完成には至っていない。

　現在地は理想と現実のはざま。中断期間直前にあたる第22節・清水戦（２△２）に向けた取材に応じたキャプテン・岩尾憲の言葉を借りるならば「長い目で見て大きな成果になる可能性を秘めている」ものの、残り試合数を考えたときには「時間軸という兼ね合いの中でもう少しハイブリッドというか自分たちの良さが出る形も主張していかないといけないのではないか」（岩尾）という側面もある現状だ。

　目標は言うまでもなくJ１残留だ。生き残りに向けて５つの要素に注目した。

　ひとつ目は、前出の清水戦で提案された解。例えばポジショニングにおける昨季の柔軟性と今季の安定感を混ぜたハイブリッドのような発想で相応のパフォーマンスを発揮した点だ。当然ながらメリットばかりではなくデメリットも浮かび上がったが、両側面を承知で臨んだことは岩尾の言動から理解できていた。そのひとつの解も含め、中断期間にどう向き合っていくのか。ただ、不透明な部分も多い。ポヤトス監督は中断期間に家族の事情により一時帰国。すでに再来日しているが新型コロナウイルス感染防止のために定められている追加的防疫措置として、クラブが管理する14日間の待機期間中のためリーグ戦再開の約１週間前まで不在。練習後に岩尾とマルセルコーチがコミュニケーションを取る場面や、その会話に甲本偉嗣ヘッドコーチが耳を傾けるような構図も目にしたが、これから進む道の成り行きを見守っている。
 

　ふたつ目は、直接対決の勝敗ですべてが決まることだ。単に算数の話だが、最もわかりやすい残留に直結する要素。下位グループの全チームに共通するが、直接対決で何勝できるかどうか。そのパーセンテージが高ければ高いほど残留の可能性は広がり、低ければ低いほど降格は近づく。

　３つ目に筆者が目を光らせているのは西谷和希だ。現時点（８/６）まで補強の情報はない。ただ、河田篤秀（大宮へ）しかり、クリスティアン・バトッキオ（退団）しかり、中断期間に主力級の２選手が去った。現有戦力で挑むのか、選手の移籍・退団で手元に残った金銭を有効活用するのか、どちらの選択を取るにせよ、昨季８得点・７アシストを挙げたJ１昇格の立役者のひとりを活用しない手はない。序盤戦の負傷離脱が長かったとはいえ、リーグ戦は６試合で202分の出場に留まっている。そのポテンシャルと男気をどうチームの武器にするのか。

　４つ目はズバリ、リスクヘッジだ。怪我やコロナウイルスは予期せず襲ってくる。加えて台風の影響で延期となり、過密日程になる可能性も起こりやすい時期に突入する。不測の事態、想定外の連戦も考慮が必要だ。不可抗力だからこそ、準備を怠らなかったチームが一歩リードできる。

　最後は、セットプレーからの得点（※PKを除く）。ボール保持率の高いスタイルを志向する中で、CKや敵陣でのスローイン含めたセットプレー獲得数は決して少なくない。小柄なチーム編成ながら昨季はCKとFKで計17得点を挙げている。ただ、今季はCKから３得点と苦戦中。カテゴリーが上がった中で「攻守ともに相手選手の駆け引きが上手い」（福岡）と難易度も上がったが、運であろうと、実力であろうと、生き残るためにはセットプレーからの得点もカギを握るはずだ。

取材・文●柏原 敏（フリーライター）