史上初となる大会中止から1年。夏の風物詩、インターハイが復活を遂げる。
前回のインターハイ本大会(2019年開催)では帝京大可児など全国の強豪校を相手に無失点を続け、ベスト8までたどり着いた徳島市立。
ここで掴んだ自信がさらなる成長をつながると考えていたなかで、新型コロナウイルスにより部活動はもちろん、通常の学校生活にも大きな変化がもたらされることになった。
練習や試合、大会が中止となり、どうしようもなく悔しい想いをした選手たちがたくさんいる。それでも選手たちはサッカーへの強い情熱を絶やさず、先輩たちから受け継いだ想いとともにインターハイでのさらなる成長を目ざす。
徳島市立高校を率いる河野博幸監督に話を聞いた。
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約1か月ぶりの公式戦を通じて一戦ごとに見せた選手たちの成長
今年のチームは2年生が多く、経験値はそこまで高くありませんでした。さらに新型コロナウイルス感染拡大の影響により、U-18高円宮杯プリンスリーグ四国は4月下旬からインターハイ予選前までの試合が開催延期。そのため、トップチームは6月4日のイン
ターハイ・徳島県予選初戦まで公式戦を行なえませんでした。
セカンドチームが参加する県リーグ1部は開催されていましたが、トップチームの選手は登録の関係で出場ができない。練習試合も禁止となっていたので、紅白戦しか行なえない状況になりました。
また、私たちの学校は他の部活動の兼ね合いで普段の練習はフルコートでトレーニングをしてこなかったので、紅白戦ができたのも今予選の1 週間前。やはり、サッカーは相手がいて成立するもの。公式戦では相手も策を練ってきますし、身内同士だと特徴もある程度分かっているので、本音を言えば、難しい部分はありました。
ただ、私自身はギリギリまでフルピッチでのゲームをさせず、選手たちの「サッカーがしたい」という欲が高まってくれればと思っていたので、その状況を逆にポジティブに捉えていました。実際に大会直前の紅白戦ではユニホームを着用させ、本番を想定して紅
白戦を実施してみると、そうした状態を作った甲斐もあり、本番さながらの雰囲気で行なえました。内容に課題はありましたが、緊張感を持って挑んでくれたことが、今予選を勝ち上がれた要因のひとつかもしれません。
また、今予選を通じて、選手たちが成長してくれた点も大きな要素です。特に今年は経験の浅い下級生が多いので、公式戦での勝利が次につながります。最近試合に絡み始めた2年生の選手たちも最初はおどおどしていたなかで、経験を積んで徐々に落ち着いてい
きました。3 年生も試合を通じて成長し、大会前は頼りなかったのですが、試合を重ねる度に逞しくなりました。経験を重ね、どんどんと選手たちが良さを発揮できるようになったので、公式戦で得られる経験値はやはり大きかったと感じています。
逆境を乗り越えて掴んだ全国の舞台。チームを率いる河野監督にインタビュー

昨年はインターハイが中止となり、今大会でも練習することも難しい状況のなかから先輩たちの想いを受け継ぎ、頂点を目指す。(写真)森田将義

プロフィール)
河野博幸/かわの・ひろゆき
1974年生まれ、徳島県出身。現役時代は徳島市立高と高知大でプレー。卒業後は徳島商高などで指揮を執り、選手権やインターハイで全国舞台を経験した。13年に母校・徳島市立高の監督に就任。
19年のインターハイでは、チームを全国ベスト8に導いた。
写真)松尾祐希