かつて、欧州のクラブが日本人選手を獲得するのには、商業的な理由があるとささやかれていた。今でもそのように言われるかもしれない。現地では少なくとも、経済効果を期待する声はあるようだ。

　古橋亨梧がヴィッセル神戸からスコットランドの名門セルティックに移籍することが決まったことで、同様の声もあがっているようだ。だが、アジアサッカーを追うジョン・デューデン記者は、英紙『The Guardian』で「フルハシ加入でセルティックが日本から財を成すことはない。それは神話だ」と題した記事で否定した。

　同記者は「アジア人選手が商業的な理由で獲得されたというのは、やや2000年代序盤の考え。今の欧州では多くが東洋からの選手もとても優れていると認識している」と指摘。そのうえで、「だがユニフォームの売上増やファン獲得につながるとの考えも残っているようだ」とも続けている。

「日本人が突然セルティックのファンになることはない。なぜそうなる？ 今はもうシュンスケ・ナカムラの時代ではない。彼の移籍がビッグニュースだったのは、欧州のビッグクラブに移籍した初期のアジア人のひとりだったからだ」

　デューデン記者は、古橋を「真のタレント」と評したうえで、「ワタル・エンドウやリツ・ドウアン、マヤ・ヨシダよりも注目される理由はなく、そして彼らのだれもユニフォームで多額の利益をあげてはいない」との見解を示した。
 

「非常に多様な大陸であるアジアのほかの場所では、またひとり日本人選手が欧州に行ったことを、特にあまり関心がもたれていないリーグに行ったことを気にする理由がない。

　日本や韓国、その他における関心をもっと明白にすることは可能だが、それはピッチでの成功次第であり、ハードワークが必要だ。多くの出場機会で良いプレーをし、チームメートや対戦相手、メディアから話題にされなければいけない」

　デューデン記者は、パク・チソンや香川真司、ソン・フンミンといった選手たちの欧州における活躍で、「アジアの一流選手に対する敬意が高まっている」としたうえで、「フルハシもその評を高められるかもしれない。ただ、その効果は限定的だ」と続けている。

「セルティックは巨大なクラブだが、スコットランドリーグは同じように見られていないからだ。グラスゴーで成功すれば、ユニフォームを買いに走る同胞がいるかもしれない。だがそれ以上に、プレミアリーグのどのクラブに移籍すべきかの議論のほうが多くなるだろう」

　実際、欧州クラブに多くの日本人選手が在籍するのが常態化した今、移籍しただけでファンの“爆買い”につながることはないだろう。ただ、いずれにしても、もっとも大事なのがピッチでの結果なのは変わらない。

　ファンも、クラブも、当然本人も願っているのは、古橋がセルティックで成功を収めることだ。

構成●ワールドサッカーダイジェスト編集部

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