【CL決勝プレビュー】メッシとテベス――アルゼンチンの天才ふたり、「11年の物語」

カテゴリ:ワールド

豊福晋

2015年06月05日

テベスは言う。「俺とメッシの対決じゃない」

奇しくも2004年に大きく動き出したメッシとテベスのキャリア。11年が経ったいま、アルゼンチンの天才ふたりがベルリンで相対する。 (C) Getty Images

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 カルロス・テベスはこれからのアルゼンチンを背負う存在になる。
 
 2004年8月28日、アテネ五輪の決勝。アルゼンチンに金メダルをもたらす決勝ゴールを奪ったのが、20歳のテベスだった。新たなスターの誕生を、世界が祝福した。
 
 ドリブルもパスも非凡で、簡単には倒されない強靭なフィジカルもある。「新しいマラドーナ」という使い古された称号が、当然のように彼の頭上にも冠された。
 
 それから2か月後、テベスと同じくらい小柄で、しかし彼とは違ってほっそりと痩せた17歳の青年が、初めてリーガ・エスパニョーラのピッチに立った。
 
 リオネル・メッシはその半年後に初ゴールを決め、世界はもうひとりのアルゼンチン人が、急速な勢いで世界の頂点へ向けて駆け出したことを知った。
 
 テベスとメッシ――。2004年は、才能溢れるふたりのアルゼンチン人アタッカーの物語が始まった年だ。
 
 メッシの登場により、テベスのキャリアが下降線に入ったわけではない。04年から2年間過ごしたブラジルのコリンチャンスでは、宿敵アルゼンチンの出身ながらクラブ史に刻まれる英雄となった。
 
 その後に渡ったイングランドでは、残留に導いたウェストハムでカルト的なヒーローとなり、マンチェスターの2クラブでもファンを虜にする活躍を披露した。
 
 メッシに追い抜かれた。どうしてもそんな印象を抱いてしまうのは、メッシのデビューからの勢いが常軌を逸していたからだ。
 
 2006年のドイツ・ワールドカップはテベスが先発でメッシは控えという立場だったが、周囲の評価は逆転しつつあった。
 
 テベスはマンチェスター・ユナイテッドでチャンピオンズ・リーグを制し、プレミアリーグ、クラブワールドカップ、そしてプレミア得点王のタイトルも手にした。
 
 しかし時が進むにつれ、アルゼンチン代表はメッシのものとなり、共存にも否定的な声が増えていく。2011年のコパ・アメリカでそれは顕著になり、テベスは2014年ブラジル・ワールドカップのメンバーに選ばれることはなかった。
 
 メッシとの不仲がメディアを騒がしたこともあったが、テベスは「メッシは偉大な選手。問題はない。俺たちは代表のチームメイトだ」と否定。世界がメッシを絶賛する陰で、セリエAという、FWにとって難しいとされる場所で着実に結果を残し、みずからのゴールでチームをCL決勝に導いた。
 
 決勝をテベスとメッシの対決、とする見方も多い。
 
 ともにチームのエースで、同じアルゼンチン人。テベスは「俺とメッシの対決じゃない」と否定するが、比較は避けられない。
 
 11年前に始まり、それぞれのキャリアを歩みながら交錯した彼らの物語は、ベルリンでどんな結末を迎えるのか。
 
 どちらが勝つかは分からない。しかし試合を決めるのがアルゼンチン人になるのはまず間違いない。
 
文:豊福晋
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