ピッチに直立する194センチはスタンドライトの趣。
「ランプシェード」
少し前まで、マンチェスター・ユナイテッドのサポーターはマルアン・フェライニを皮肉たっぷりにこう呼んでいた。
エバートンで師弟関係にあったデイビッド・モイーズ前監督に誘われ、ベルギー代表MFがマンチェスターにやって来たのは2013年9月。移籍期限最終日のことだった。移籍金は2750万ポンド(約46億8000円)と高額で、サポーターの期待は否応なしに高まったが、フェライニは低調なパフォーマンスに終始してしまう。
期待は落胆へと変わり、フェライニ獲得は期限最終日にパニックに駆られた無駄遣い、補強の失敗の典型例などのレッテルが貼られた。
ルイス・ファン・ハール監督が就任してもフェライニを取り巻く状況は変わらず、プレシーズンマッチのバレンシア戦では、彼に対するブーイングがオールド・トラフォードに鳴り響いた。
ランプシェードと揶揄される理由は、トレードマークであるアフロヘアがちょうどそう見えるからだけではない。図体ばかりが大きくて、まったくと言っていいほど動かない。ピッチに直立する194センチは、さらながらスタンドライトといった趣だからでもある。
しかし今シーズン、フェライニの評価はゆっくりと上昇していった。秋口からはレギュラーに定着。肋骨の怪我で昨年末からいったん戦列を離れたが、コンディションが万全に整った3月からスタメンに復帰し、ユナイテッドの反攻の原動力になっている。
オランダ人指揮官も、「わたしは創造性豊かな選手をいつも重用しているが、イングランドではそれだけでは勝てない。チームには接触プレーに強い選手が必要で、フェライニは間違いなくその類の選手」と称賛する。
シーズン序盤は「構想外で売却されるのでは」と番記者の間でも意見が一致していたが、4月12日のマンチェスターダービーの前にファン・ハールが「キーマン」に位置づけるなど、いまやその評価は180度変わった。チームメイトのアシュリー・ヤングも、称賛の言葉を惜しまない。
「今日(マンチェスターダービー)のフェリー(フェライニの愛称)は凄まじかった。フェリーがペナルティエリア内でボールを受ければ、ゴールの可能性は高まる。好調時の彼を捕まえるのは至難の業。完封できるマーカーなんて、まずいないよ」
加入1年目の昨シーズンは、手首と腰の怪我にも苦しみ最後まで本領を発揮できなかった。しかし、ロングボールによる直線的な攻撃とパスサッカーを巧みに使い分けるファン・ハールのサッカーで、その「強さ」と「高さ」が活かされた。怪我から開放されると運動量も向上し、オランダ人指揮官に「いまのパフォーマンスができていれば、先発メンバーから外せない」と言わしめた。
失意に沈んだモイーズ政権の象徴的存在とまで言われたフェライニだが、「ランプシェード」の汚名を返上し、ようやくユナイテッドに確かな光を灯しはじめた。
【記者】
Mark OGDEN|Daily Telegraph
マーク・オグデン/デイリー・テレグラフ
英高級紙で最大の発行部数を誇る『デイリー・テレグラフ』のユナイテッド番を務める花形で、アレックス・ファーガソン前監督の勇退をスクープした敏腕だ。他国のサッカー事情に通暁し、緻密かつ冷静な分析に基づいた記事で抜群の信頼を得ている。
【翻訳】
田嶋康輔
少し前まで、マンチェスター・ユナイテッドのサポーターはマルアン・フェライニを皮肉たっぷりにこう呼んでいた。
エバートンで師弟関係にあったデイビッド・モイーズ前監督に誘われ、ベルギー代表MFがマンチェスターにやって来たのは2013年9月。移籍期限最終日のことだった。移籍金は2750万ポンド(約46億8000円)と高額で、サポーターの期待は否応なしに高まったが、フェライニは低調なパフォーマンスに終始してしまう。
期待は落胆へと変わり、フェライニ獲得は期限最終日にパニックに駆られた無駄遣い、補強の失敗の典型例などのレッテルが貼られた。
ルイス・ファン・ハール監督が就任してもフェライニを取り巻く状況は変わらず、プレシーズンマッチのバレンシア戦では、彼に対するブーイングがオールド・トラフォードに鳴り響いた。
ランプシェードと揶揄される理由は、トレードマークであるアフロヘアがちょうどそう見えるからだけではない。図体ばかりが大きくて、まったくと言っていいほど動かない。ピッチに直立する194センチは、さらながらスタンドライトといった趣だからでもある。
しかし今シーズン、フェライニの評価はゆっくりと上昇していった。秋口からはレギュラーに定着。肋骨の怪我で昨年末からいったん戦列を離れたが、コンディションが万全に整った3月からスタメンに復帰し、ユナイテッドの反攻の原動力になっている。
オランダ人指揮官も、「わたしは創造性豊かな選手をいつも重用しているが、イングランドではそれだけでは勝てない。チームには接触プレーに強い選手が必要で、フェライニは間違いなくその類の選手」と称賛する。
シーズン序盤は「構想外で売却されるのでは」と番記者の間でも意見が一致していたが、4月12日のマンチェスターダービーの前にファン・ハールが「キーマン」に位置づけるなど、いまやその評価は180度変わった。チームメイトのアシュリー・ヤングも、称賛の言葉を惜しまない。
「今日(マンチェスターダービー)のフェリー(フェライニの愛称)は凄まじかった。フェリーがペナルティエリア内でボールを受ければ、ゴールの可能性は高まる。好調時の彼を捕まえるのは至難の業。完封できるマーカーなんて、まずいないよ」
加入1年目の昨シーズンは、手首と腰の怪我にも苦しみ最後まで本領を発揮できなかった。しかし、ロングボールによる直線的な攻撃とパスサッカーを巧みに使い分けるファン・ハールのサッカーで、その「強さ」と「高さ」が活かされた。怪我から開放されると運動量も向上し、オランダ人指揮官に「いまのパフォーマンスができていれば、先発メンバーから外せない」と言わしめた。
失意に沈んだモイーズ政権の象徴的存在とまで言われたフェライニだが、「ランプシェード」の汚名を返上し、ようやくユナイテッドに確かな光を灯しはじめた。
【記者】
Mark OGDEN|Daily Telegraph
マーク・オグデン/デイリー・テレグラフ
英高級紙で最大の発行部数を誇る『デイリー・テレグラフ』のユナイテッド番を務める花形で、アレックス・ファーガソン前監督の勇退をスクープした敏腕だ。他国のサッカー事情に通暁し、緻密かつ冷静な分析に基づいた記事で抜群の信頼を得ている。
【翻訳】
田嶋康輔