現地時間12月８日、チャンピオンズ・リーグのグループＨ最終節でパリ・サンジェルマンはトルコのバシャクシェヒルを迎えた一戦に臨んだ。同グループではパリSGのほか、マンチェスター・ユナイテッド、RBライプツィヒが決勝トーナメント進出の可能性を残しており、この試合ですべてが決まるという大一番だった。

　しかし、この試合は驚くべき出来事で中断、そして中止されることになる。第４審判を務めたルーマニア人審判のセバスティアン・コルテスクが、バシャクシェヒルでアシスタントコーチを務めるピエール・ウェボに対して、人種差別的な発言をしたとして、ベンチ側が大騒ぎになった。

　主審は当初、第４審判にかみついたウェボに対してレッドカードを提示。しかし、その後にセネガル代表FWデンバ・バが「なぜ黒人に対しては『この黒人』というのに、白人に対しては言わないんだ？ 僕らはうんざりだ。僕らはサッカーがしたいんだ」と詰め寄り、バシャクシェヒルの選手やスタッフは、一斉にロッカールームに引き上げた。
 

　そして、この時にパリSGのある選手も主審に詰め寄っていた。フランス代表FWのキリアン・エムバペだ。

　主審に対して「彼がピッチにいるかぎりプレーはできない。彼は出て行くべきだ。そんな審判を認めることはできない」と、暴力はしないという意味を込めた、背中で手を組んだ状態で発言。副主将のプレスネル・キンベンベも「なぜ第４審判は差別発言をしたんだ？ 信じられない、みんな、ピッチを出よう」とチームメイトたちに呼びかけ、フィールドから去っている。

　２時間後、欧州サッカー連盟（UEFA）から正式に試合中断が通達され、問題発言に対しては調査を行なうと発表。翌日に審判４人全員を入れ替えて、中断した13分から試合が再開されることも決まった。

　エムバペはその発表後、自身のSNSを通じて「人種差別にはノーを。ミスターウェボ、僕らはあなたと共にある」と対戦相手のコーチにメッセージを送った。キンベンベも同様のメッセージを綴り、ネイマールやマルキーニョスらも続々と賛同している。

　フットボール界では人種差別によるサポーターの発言や行動などが問題視され、これまでに厳しい制裁も下されてきた。だが、審判のこのような行動は前代未聞だ。UEFAと、そしてルーマニアサッカー連盟は、調査の末、どのような判断を下すのだろうか。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部