【CLポイント解説】ノーリスクでの大勝劇をひとりで演出したテベスの凄さ

カテゴリ:ワールド

遠藤孝輔

2015年03月19日

逆転を狙うドルトムントの望みを砕いたユーベの個と組織の力。

1)理想的だった立ち上がり
 
 過去に一度も敗れた経験のないドルトムントの本拠地で、3-0と文句なしの完勝を収めたユベントスが、2シーズンぶりの準々決勝進出を決めた。
 
 高度な組織力を誇るだけでなく、テベスに代表される卓越した個のクオリティーを有するイタリア王者は、逆転勝利をめざしていた相手に見せ場らしい見せ場を与えない圧巻の試合運びを見せつけた。
 
 立ち上がりから完璧だった。3分、トラップからワンステップで放ったテベスの矢のようなミドルが、ドルトムントのネットに突き刺さる。これでトータルスコアは3-1――。是が非でも先制したかった相手の出端を挫いたユーベは開始早々、敵地で精神的な余裕も得て、より優位に立った。
 
2)冴え渡ったカテナッチョ
 
 エースの一撃で先手を取ったユーベは、リスクを冒した攻めに転じる必要がなくなり、失点回避に徹するようになる。
 
 最終ラインを低い位置に設定したうえで、3ボランチ+4バックの2ライン間を緊密に保つと、バイタルエリア付近のスペースを消し、引いた相手を崩すための創造性に欠けるドルトムントの攻撃を難なくさばいていった。
 
 このカテナッチョの色合いが強まったのは、負傷したMFポグバとの交代でCBバルザーリがピッチに入り、3バックにシフトチェンジした27分以降。とにかく献身的だったマルキージオやビダルのハードワークを基盤に、守備時はサイドでも中央でも数的優位に立ち、守護神ブッフォンが肝を冷やすような場面を一度も作らせなかった。
 
3)質の高い“いなし”も披露
 
 後半開始から活用しはじめた、ピッチの幅を目いっぱい使ったボールポゼッションも効果的だった。丁寧な繋ぎのパスだけでなく、時折マルキージオやペレイラのドリブルを織り交ぜた質の高い“いなし”は、守勢に回りたくないドルトムントのスタミナを徐々に、そして確実に奪っていった。
 
 前半同様の堅守を見せる一方で、ボールを保持する時間を増やしたユーベは、50分、56分と立て続けに決定機を作り出す。それぞれテベス、ペレイラのドリブル突破→ラストパスから、モラタがエリア内で決定機を迎えたのだ。
 
 そして70分。ドルトムントのオフサイドトラップを掻い潜ったテベスが、相手GKとの1対1の局面で冷静に味方への横パスを選択して、モラタが勝負を決める追加点を奪取してみせた。
 
4)勝利の立役者となったテベス
 
 79分にはみずからの2ゴール目を叩き込んだテベスは、第1レグとの違いを生み出しつづけた勝利の立役者。ボールを持って前を向いた際のドリブル突破は切れ味十分で、フィニッシュやラストパスの精度の高さでも他の追随を許さなかった。
 
 効果的な仕掛けのほとんど全てを先導したエースが、大黒柱ピルロを怪我で欠いたユーベにとって、最大の拠り所となっていたのは疑いの余地がない。
 
5)ドルトムント最大の敗因は…
 
 一方、ドルトムント最大の敗因はラスト30メートルでの拙攻だろう。
 
 敵陣にスペースが広がっていない際のオーバメヤンやロイスは、自慢のスピーディーな仕掛けを繰り出せず、カンプルとムヒタリアンの両アタッカーとともにユーベ守備陣に封殺された。攻撃に厚みを加えたくても、両SBのシュメルツァーとパパスタソプーロスは攻撃時のクオリティーが足りず……。
 
 テベスという個の力だけでもゴールに迫れたユーベとは対照的だった。
 
 さらに、あえてもうひとつの敗因を挙げるなら、一度もリードできなかったことではないだろうか。相手が前がかりにならざるをえない状況を作り出せていれば、敵陣に生じたであろうスペースを高速カウンターで突くチャンスが増えていたはずだ。
 
 その意味でも、第1レグ、第2レグともに、15分以内での先制を許したのは痛恨だった。
 
文:遠藤孝輔

圧巻のプレーを披露して、攻守両面でチームに多大な好影響を与えたテベス。試合後は「偉大な試合」と満足気だった。 (C) Getty Images

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またも本拠地でユーベに敗れたドルトムント。1995-96シーズン(グループリーグで1-3)以来で通算では4敗目となった(ちなみに通算成績は2勝1分け6敗)。 (C) Getty Images

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