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「女好きで素行が悪い」そんなイメージだったブラジル人がラ・リーガに起こした“化学反応”【小宮良之の日本サッカー兵法書】

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2020年09月21日

ブラジル人選手の参戦でリーガは一気に華やかに

リーガで異彩を放ったロナウジーニョ(左)とロナウド(右)。(C) Getty Images

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「ブラジル人は酔っ払いで、夜は踊り狂い、度を超える女好きで、とにかく素行が悪い」

 実は1990年代に入るまで、スペインではこんな噂が信じられていた。イメージを極端にしたものだろう。その昔、「日本人は、男はちょんまげで、女は芸者」という”時代錯誤の誤情報“が流布されていたのと同じ種類のものだ。

 当時、ラ・リーガには一部ブラジル人選手が入ってきても、ほとんど活躍できていなかった。

 パイオニアになったのは、デポルティボ・ラ・コルーニャで活躍するようになったマウロ・シルバだと言われる。真面目で規律正しく、プレーの質も高ったことで、ブラジル人選手全体が見直された。次々にマーケットが開かれていった。その後、ロマーリオ、ベベット、ロベルト・カルロス、ロナウドなどが次々に入ってきた。

 その結果、リーガは一気に華やかになった。サンバのリズムというのか。その明朗なテクニックは、刺激を与えることになったのだ。
 
 最も顕著なのが、バルセロナだろう。ロマーリオ、ロナウド、リバウド、ロナウジーニョ、そしてネイマールとブラジル人ファンタジスタを取り込むことで、特殊なパスサッカーを革新させてきた。ブラジル人の独特なテンポやひらめきを、触媒にしたのだ。

 とりわけ、ロナウジーニョの存在感は際立っていた。自由奔放。気が向くままにボールを弾く姿は、スペクタクルと同義だった。バルサの攻撃的なフットボールと融合。サンティアゴ・ベルナベウで宿敵レアル・マドリーを相手に翻弄し、スタンディングオーベーションを受けた場面は、伝説として語り継がれるだろう。まさに、「ジョゴ・ボニート」(ポルトガル語で美しいプレー)だった。

 今や、リーガの上位クラブは、多くのブラジル人選手を擁する。

 昨シーズン、優勝したレアル・マドリーは、DFマルセロ、エデル・ミリトン、MFカゼミーロ、FWヴィニシウス・ジュニオール、ロドリゴとブラジル人選手が中核を担っている。ここ20年以上、ブラジル人選手の系譜は途切れていない。新たに獲得したレイニエールは「カカ二世」と言われ、2020-21シーズンはボルシア・ドルトムントへのレンタル移籍が決まった。

 昨シーズンのチャンピオンズ・リーグで王者リバプールを撃破したアトレティコ・マドリーは、DFフェリペ、レナン・ロディ、そしてジエゴ・コスタはスペイン代表だが、ブラジル人である。ヨーロッパリーグ王者に輝いたセビージャも、DFジエゴ・カルロス、MFフェルナンドを擁し、レアル・ソシエダはFWウィリアン・ジョゼ、バレンシアはDFガブリエウがプレーしている。

 ブラジル人の化学反応。

 それはスペクタクルとイコールだろう。彼らは勝利を目指し、老獪にプレーするが、ボールゲームの美しさ、楽しさも求める。そのブラジル人とプレーすることで、刺激を受ける選手もいる。それが、その国のリーグの力にもなるのだ。

 その点、創設以来、ブラジル人が外国人選手の基礎となってきたJリーグも、大きく影響を受けているのだろう。

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月には『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たした。
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