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あのブラジル人J戦士はいま【第4回】エメルソン――年齢詐称から始まったキャリア。札付きの悪童が“貧民街の天使”へ

カテゴリ:Jリーグ

沢田啓明

2020年08月03日

「将来性はカカより上」と激賞される

01年に加入した浦和では5シーズンに渡ってプレー。驚異的なペースでネットを揺らし続けた。(C)SOCCER DIGEST

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 あらゆる意味で、破天荒な男だ。

 爆発的なスピードと野生動物のような身のこなしでマーカーを置き去りにし、右足から強烈なシュートを叩き込んだ。DFとの駆け引きが巧みで、勝負強さも抜群。対戦相手にしてみれば、エメルソンは危険極まりないストライカーだった。

 その一方で、無用なラフプレーや審判への抗議でカードをもらい、重要な試合を累積警告でしばしば欠場。練習をすっぽかしたり、大幅に遅刻をしたりするのは日常茶飯事で、ブラジルへ帰国するといつ戻ってくるかわからない問題児だった。

 リオ郊外の極貧家庭の出身。家には「床」がなく、土が剥き出しで、トイレすらなかった。

 絶対的な貧困から抜け出す唯一の手段として、プロ選手を目指す。しかし、栄養不足で身体の発育が遅く、体力もない。少年時代は、全く目立たなかった。

 将来を案じた母親が、彼が17歳のときに2歳9か月も若い出生証明書を偽造する。それを持って名門サンパウロFCのU-15のテストを受け、合格した。

 同じチームにMFカカ(後にACミラン、レアル・マドリー、ブラジル代表などで活躍)がいたが、クラブ関係者は「将来性はカカより上」と激賞した。
 
 1998年、17歳(実年齢は20歳)でトップチームに昇格し、翌年のブラジルリーグで8試合に出場して2得点。しかし、クラブは彼の年齢詐称に気付く。ブラジル・サッカー連盟からの処罰を危惧し、1999年末にコンサドーレ札幌(当時J2)へ期限付き移籍させた。公称18歳だったが、実際は21歳だった。

 名門サンパウロFCで将来を嘱望された実力は、J2では別格だった。34試合に出場して31得点をあげて得点王。2001年、川崎フロンターレ(当時J2)へ完全移籍し、18試合で19得点。しかし、問題行動の多さに川崎が音を上げ、この年8月に浦和レッズへ移った。

 2003年、ナビスコカップで8得点を奪って浦和に史上初のタイトルをもたらし、Jリーグで18得点を記録して年間MVP。2004年もJリーグで26試合に出場して27ゴールを挙げて得点王に輝く。しかし2005年7月、好条件を提示されてアル・サッド(カタール)へ去った。

 日本では、J2で52試合に出場して50得点、J1で100試合に出場して71得点という驚異的な数字を残した。
 
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