FC東京はなぜ「理想的な展開」を実現できたのか? ホーム浦和戦、16年ぶり勝利のポイント

カテゴリ:Jリーグ

加部 究

2020年07月19日

強度のある個が浦和との違いを生み出した試合に

FC東京が浦和を16年ぶりにホーム味スタで破る。強度のある個が躍動した。(C) SOCCER DIGEST

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[J1リーグ5節]FC東京2-0浦和/7月18日(土)/味スタ

 首位川崎への挑戦権を賭けたサバイバルマッチの様相を呈した類似性の濃い関東圏決戦は、成熟度の高いFC東京が持ち味を発揮して浦和に2-0で快勝した。味スタでの勝利は16年ぶりなので、苦手克服の意味でも価値は高かった。

 似た者同士に映るのは、どちらも歴史的にサッカーの色やチーム作りの流れが定まらず、現状が成熟期に近いからだ。原博実時代にダイナミックな攻撃で鮮明な色をつけたFC東京は、その後ポポビッチや城福体制ではポゼッションを基調としたが、むしろ結果に繋がったのは堅守を軸としたフィッカデンティや現体制で、そのまま長谷川健太監督が継続している。それに対し浦和はチーム構成から変革が待ったなしの状況なので、フィンケ時代の育成色を戻しながら新しい血を導入しているので、そういう意味ではアカデミー出身の大槻毅監督は適任なのかもしれない。

 FC東京に流れが傾いたのは「先制点がすべて」(浦和・大槻監督)で、東京側の視点では「それで後半は落ち着いて出来て、理想的な展開での勝利」(長谷川監督)に繋がった。

 実際ボール保持の時間が長いのは浦和で、前半はペナルティエリアへの侵入回数も互角だったが、後半は東京が圧倒するようになり、浦和はクロスを繰り返しては跳ね返されるようになった。大槻監督は杉本+長澤からレオナルド+マルティノスの2枚替えなどで打開を図ったが、長くチームを支えて来た柏木、武藤、阿部らに代わる理想の組み合わせを探しあぐねている状況だ。

 重要な分岐点となる先制点を生み出したのは、森重真人の欧州基準並みのサイドチェンジと、室屋成の相手と並走しながらのクロスで、どちらもここ数年東京のストロングポイントとして定着している。また浦和が苦しんだのは「ディエゴ・オリヴェイラに起点を作られた」(大槻監督)からで、東京の勝因を探れば、惨敗した川崎との多摩川クラシコでも孤軍奮闘していたD・オリヴェイラを敢えてサイドで起用し、深めの位置でボールを引き出すカウンターの起点としたことだった。

 もともと長谷川監督は、個でやり切れる選手を好む傾向が顕著だ。そういう意味では、D・オリヴェイラ、室屋、さらには自陣ボックス内でも水際立った仕事ぶりを見せた森重、そして自らのインターセプトから3人を振り切って追加点を奪ったアダイウトンと、とりわけ強度のある個が浦和との違いを生み出した試合となった。

 これでFC東京は、4点差で完敗した川崎戦を経て2位に浮上。指揮官の建て直しぶりは見事だ。だがここからさらに卓越した技術と連動の肉づけがある川崎を追うのは、簡単な仕事ではない。

取材・文●加部 究(スポーツライター)

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