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攻撃側の“トロイの木馬”はサイドアタッカー。いかに真横から攻められるか【小宮良之の日本サッカー兵法書】

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2020年07月17日

精度の高いクロスを送れる選手は、飛び道具になる

マジョルカで評価を高めた久保が右サイドで違いを作り出した。(C) Getty Images

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 集団戦において、真っ向からのぶつかり合いは強い者が勝つ。それだけに、弱い者は正面から戦うのを回避し、塹壕や土塁を作って、その差を埋める。そうなると、戦力的な強者も被害が出るだけに慎重になる。結果、勝負は膠着するのだ。

 サッカーでも、正面からの中央突破は攻めるほうがリスクを背負う。相手は正面を分厚く守っているはずで、虚をつけず、なかなか突破はできない。その時、攻める側が防御線にもたつき、カウンターを発動されると、一気に失点のピンチとなる。中央で始まったカウンターは、サイドよりも早く最短距離でゴール前に迫るだけに、致命的な打撃となるのだ。

 正面、中央での攻防はそこまでの差が出ない。

 やはり、横からサイドから攻められるか。攻めることはすなわち、守ることでもある。

「もし、整った守りをしたいなら、自分たちのゴールに対し、(相手の攻撃と)平行に守るのが基本だ。ダイアゴナル(対角線)で守ると、斜めからの攻撃を受け、ボールから目を離せなくなり、裏を取られるなど混乱が生じる」

 かつてレアル・マドリーを率い、ヨハン・クライフ率いるバルサと熾烈な戦いを演じたベニート・フローロはそう説明している。

「攻める側にとっての“トロイの木馬”(ギリシャ神話のトロイ戦争で、難攻不落の城に対し、木馬に内通者を忍ばせ、陥落させた)は、サイドの選手ということになる。彼らが深く入り込んだ場合、真横からも攻撃が可能になる。すると守るほうは完全に身体をそちら側に向けざるを得なくなる。そうなると、視野を確保できない。一方で、攻める側はボールと味方と敵をすべて視野に入れ、先手を取れるのだ」

 必然的に、現代サッカーの攻防はサイドに移っているのだろう。

 守る側は、サイドを拠点として守り、相手を容易には侵入させない。しばしば強度の高いプレッシングを与え、奪いにかかる。守備から攻撃に転じ、攻撃の策源地とするのだ。

 一方、攻めるほうはそれを予期し、素早くボールをサイドに変えることで、相手を消耗させ、身体の向きを一気に変える。相手を混乱させつつ、再び、横撃を試みる。精度の高いクロスを送れる選手は、飛び道具になる。サイドのポジションに一人で突破からシュートまでいけるアタッカーを配置し、相手を仕留める戦い方もある(中に切り込んで“逆足”でシュートを狙う形は定石になっている。リオネル・メッシはその典型だろう)。

 横からダメージを与えると、守る側はそちらに人を割かざるを得ない。それは攻撃の厚みを生むだろう。中央の守りが手薄になれば、攻める側は一本のパス、一人のドリブル突破で、一気にゴールを狙える。そして中央を閉じられたら、再び横から抉ることもできるのだ。

 定石は大事だが、定石は定石でしかない。

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月には『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たした。
 
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