【ストイコビッチ/この一枚】カリスマ性を身にまとった選ばれし者の“妙技”

カテゴリ:連載・コラム

徳原隆元

2020年06月19日

“人間ストイコビッチ”の存在感によってひとつにまとまる

就任3年目の指揮官ピクシーは、高い実力と自尊心を併せ持った選手たちを上手くまとめ上げて優勝に導いた。写真:徳原隆元

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 2010年、名古屋グランパスの監督に就任して3年目となるドラガン・ストイコビッチは、Jリーグ制覇の願いをついに叶えた。

 写真は、8月8日のJ1第17節FC東京対名古屋グランパス戦での一枚である。名古屋は劣勢の試合展開をなんとか凌ぎ、90+4分に田中マルクス闘莉王がヘッドで決勝点を奪い勝利する。試合後、劇的な勝利の立役者となった闘莉王をストイコビッチが労う場面で、ふたりの笑顔が実に印象的だ。指揮官と選手との絆が写真を通じて伝わってくる。

 このシーンは、名古屋がリーグ戦で記録した23勝のうちのひとつの歓喜に過ぎない。だが、優勝という結果を知って振り返れば、このシーンは名古屋のJリーグ制覇を象徴しているように感じた。

 サッカーで勝利するためには、選手たちの優れた個人技術にチーム戦術、それにフィジカルコンディションと様々な要素が必要となる。さらに精神面の充実も加わる。選手たちがひとつの目標に向かって邁進する統一した意志が大事だ。

「妖精」を意味するピクシーが愛称のストイコビッチが、現役時代にJリーグの舞台で魅せたファンタスティックなプレーは、名古屋サポーターだけでなく、見る者のすべてを魅了した。そのストイコビッチが指揮官として名古屋に戻って3年目を迎えたチームは、戦力も充実し、悲願のリーグ優勝を現実として捉えられるまでに成長していた。
 
 しかし、実力のある選手たちは自分のプレーに自信を持っているだけに個性が強く、チーム内に衝突を起こす火種を内包していることが多い。ストイコビッチの成功は、高い実力と自尊心を併せ持った選手たちを上手くまとめ上げた点にある。

 3試合を残して早々に優勝を決めた名古屋のサッカーは、現役時代のストイコビッチのプレー同様にハイクオリティなものだったことは間違いない。だが、写真の中で喜びを分かち合うストイコビッチと闘莉王を見ると、名古屋優勝の原動力は、ピッチ内のプレーレベルよりも、“人間ストイコビッチ”の存在感によってチームがひとつにまとまっていたからだと強く感じる。

 それはカリスマ性を身にまとった選ばれし者の“妙技”だった。

取材・文・写真●徳原隆元

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