レスター・シティのイングランド代表FWジェイミー・ヴァーディーは、かつての僚友と再会するたびに同じ質問をしているという。

「まだあのクルマに乗っているのかい？」

　答は毎回、「イエス」だ。ヴァーディーは「本当に稀で、驚くべきことだよね」と感心する。

　その相手とはほかでもない、現在チェルシーに籍を置くフランス代表MFエヌゴロ・カンテだ。2015年夏にカーンからレスターに移籍し、加入１年目でプレミアリーグ制覇に多大な貢献を果たした。すぐさま西ロンドンの名門に引き抜かれ、イングランドでの生活は早や５年目を迎えている。

　ヴァーディーが気にしているのは、カンテの愛車だ。なんと現在の週給が29万ポンド（約4000万円）とも言われる男は、レスター入団時に足代わりとして購入した『MINI COOPER』をいまでも大事に乗り続けているのだ。追跡調査したのは英紙『The Sun』。同紙によると購入した当時の額は２万ポンド（約270万円）で、４年半が経った現在の価値は半額程度に落ちているという。

　所有しているのはずっとこの一台のみ。プレミアリーグのワールドクラスたちがランボルギーニやフェラーリ、ポルシェ、ロールスロイス、レンジローバーなど数千万円もするスーパーカーを複数所有しているのが別世界とばかりに、カンテは独自の金銭感覚を貫いている。

　それでも、１年前に“乗り換え”の危機があった。アーセナルとのカラバオ・カップを戦うべく、本拠地のスタンフォード・ブリッジに愛車で向かったカンテ。その途上で衝突事故に遭い、『MINI COOPER』の左前頭部は激しく損傷した。

　警察を呼んで事故処理をしている最中、カンテに気づいたサポーターが殺到。「僕はこの通り、大丈夫だよ」と笑いながらカンテは、ファンが望むセルフィー撮影に快く応じていたという。そして週明け、カンテはギコギコと音を鳴らしながら、壊れたままの愛車を運転し、チェルシーの練習場に姿を見せたのである。

 

　同紙の直撃に対してカンテは、「ああ、ずっと同じクルマだよ。なぜかって？　僕はクルマというものにそこまでの愛情を抱いていないんだ。若い頃からクルマへの執着がなかった。それだけのことだよ」と、こともなげに返答した。

『The Sun』紙は、「クルマだけでなく、カンテはいかにも金持ちといった振る舞いをほとんど見せない。いつも気さくで、どこか庶民的で謙虚だ。だからこそエヌゴロは、みんなに愛されるのだろう」と論じている。

　いまやチェルシーのなかで最高額のサラリーを得ているカンテ。いったい彼はなににカネを使っているのか。そして『MINI COOPER』と、あと何年を共にするのだろうか。実に稀有なプレミアリーガーである。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部

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