【鹿島担当コラム】「結果」を免罪符にしていたら、終わってみれば無冠の可能性も…

カテゴリ:Jリーグ

広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

2019年10月24日

歴然とした実力差はあったはずだが

局面の勝負では個々が奮闘し、Honda FCの反撃を抑え込む。ただ、J1の貫禄を見せつける戦いぶりではなかった。写真:徳原隆元

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[天皇杯準々決勝]鹿島1-0Honda FC/10月23日/カシマ

 シュート数は、Honda FCの14本に対して、鹿島はその半分の7本。決定的なチャンスの数でも下回った。土居聖真のヘディング弾で1点をリードした後は、少なくとも2度、決められていてもおかしくないピンチに見舞われた。試合を通じて、ボール回しのスムースさでもHonda FCに分があった。

 内容では、引けを取っていた。それでも次ラウンドに勝ち進んだのは鹿島だった。

 さすがの勝負強さ、と言えば、そうなのかもしれない。内容よりも結果。あくまでも優先すべきは勝利。それ自体は悪くない。むしろ、何よりも大事なことだ。ただ、“これぞ鹿島らしい戦いぶり”の一言で片づけては、何か引っかかるものがある。

 Honda FCは好チームだった。攻守に連動性のある組織的なサッカーを展開し、カウンターの鋭さも兼備。ここまで札幌、徳島、浦和とJクラブを下してきた実力は、フロックではないことを証明した。

 最も足りなかったのは、最終局面のクオリティか。それ以外でも、細かい部分で技術的なミスが散見され、自ら流れを切ってしまう場面が少なくなかった。そこに、J1とJFLというカテゴリーの違いが見て取れた。普段からどういうレベルの相手と戦っているか。ごまかしのきかない歴然とした実力差はあったように思う。

 つまり、鹿島が自滅しない限り、まず負ける相手ではない、と。冒頭の2度のピンチもヒヤリとさせられはしたが、それまでのいくつかのシーンで相手がイージーなミスを繰り返したことを思い返せば、シュートが枠に飛ばなくても、納得できる部分は少なからずある。
 
 問題は、そうした相手に対し、鹿島が互角に近い勝負を演じたことだ。たとえば、ポゼッションで劣っていても、“ボールを持たせている”という雰囲気ではない。奪おうとして、奪えない。Honda FCの組織立ったパス回しに振り回される。

 攻撃に関しては、少ないチャンスを確実にモノにした土居の決定力の高さは特筆に値する一方で、チームとして相手を慌てさせるような仕掛けやパス交換は限られていて、Honda FC同様、ラストパスの精度も低かった。

 三竿健斗、レオ・シルバ、セルジーニョ、犬飼智也と、少なくない主力メンバーの負傷離脱というエクスキューズはある。彼らが健在ならば、また違った内容になっていたかもしれないが、不在であれば、厳しく見れば「これがJ1で首位に立つチームの戦いぶりか」と思わざるをえないパフォーマンスだった。

 低調な出来でも、勝利を掴む。なによりも大事なのは結果。ただ、それを免罪符にして、現状に疑問を持たなければ、終わってみれば無冠、という事態になりかねない。断トツの20冠を誇るクラブだけに、タイトルを獲る難しさは重々承知し、いかなる時でも満足とは無縁だとは思うが、勢いを取り戻しつつあるだけに、今一度、さらなる危機感を持って、次なる戦いに臨んでほしい。

取材・文●広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)

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