“格下”との試合で森保ジャパンを強化していくには?【小宮良之の日本サッカー兵法書】

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2019年10月02日

「勝負の厳しさ」を失いかねない

6月のコパ・アメリカで代表デビューを飾った上田。大迫の欠場が濃厚な10月シリーズでの招集はあるのか。(C)Getty Images

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 2022年のワールドカップ・カタール大会に向け、森保ジャパンは強化を進めている。

 ベスト16に勝ち進んだ18年ロシア大会から1年以上が過ぎたが、これまでのところ、上々の成果を上げている。今年1月のアジアカップは決勝でカタールに敗れたものの、決して悲観する内容ではなかった。ロシア大会の戦いが素晴らしかっただけに、「世代交代、チーム変革は難しい」と思われたが、中島翔哉、堂安律、冨安健洋など若手が次々に台頭し、新しいチームに作り替えられた。

 そして今年6月に参加したコパ・アメリカではグループリーグ敗退に終わったとはいえ、U-22に近い陣容でウルグアイ、エクアドルと引き分けるなど、善戦した。久保建英、上田綺世、安部裕葵、三好康児、岩田智輝などは、いずれもポテンシャルの高さを示している。森保一監督は東京五輪代表も兼任しているが、その点、最高の強化となったと言える。

 1年を振り返ると順風満帆に近いが、安穏ともしていられない。
 
 これから1年近く、森保監督は難しい差配を突き付けられる。カタール・ワールドカップのアジア2次予選を戦うが、対戦国とはあまりに実力差が離れている。キルギス、タジキスタン、ミャンマー、モンゴルと同組だが、非力な相手ばかり。

<勝負の厳しさ>

 それが失われかねない懸念があるのだ。

 ひどく力が劣った相手に対し、どれだけ大量点を入れても、それはイコール、強化には結びつかない。そもそも強豪国は弱小国のように隙を与えないもので、試合中に発生するストレスが違い過ぎる。弱い相手と戦い続けることで、いいプレー、悪いプレーの境界線もあいまいになる危険性も孕む。

 ただ、現実には格下と戦い続けるしかない。

 そこで先日のミャンマー戦は、一つの模範になるだろう。日本は攻守に集中力を切らさなかった。後半は強度が落ちたものの、コンビネーションと個人を使い、攻め崩す機会を増やしていた。守備もポジションを失わず、セカンドボールを拾い、再攻撃を仕掛け、抜け目がなかった。敵地で0-2以上の実力差を見せつけた。

単純なゴール数はあまり意味がない。チームとしての動きを確立しつつ、プレーモデルを練り上げ、精度を高められるか。五輪代表監督も兼ねる森保監督としては、若手を登用しながらチームをアップデートし続ける使命を負うことになるだろう。例えば、10月の代表戦は故障中の大迫勇也を招集できない可能性が高いが、鹿島アントラーズに入団した上田綺世には絶好の機会だ。

 なにも極端に、「東京五輪世代中心で戦う」とかじを切る必要はない。特別な理由がない限り、代表はベストメンバーを選ぶべきで、そのおかげで尊敬される集団になる。それが内外に求心力を生み、価値を失わず、高めることにもつながる。

ただ一方、五輪世代で活躍している選手をメンバーに一人ふたり入れ替えていくことで、貴重なフル代表の経験も積める。それは東京五輪という特別なイベントに向け、還元されるはずだ。

 10月10日、日本はモンゴルと埼玉スタジアムで対戦する。

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月には『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たした。
 
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