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【小宮良之の日本サッカー兵法書】「若手」の定義の違いがその後のキャリアに影響?日本では23歳以下だがスペインでは…

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2019年05月04日

「3歳の差」をどう考えるべきか

バルセロナのBチームは2部B(実質3部)に所属。今シーズンにトップデビューを飾った19歳のプッチなどが研鑽を積んでいる。(C)Getty Images

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「若手育成」

 それは、その国のサッカーが強くなっていくために、欠かせない命題と言えるだろう。

 しかし若手とは、具体的に何歳までを指すのか?

 例えば、日本のJ3リーグにはFC東京、ガンバ大阪、セレッソ大阪がU-23のチームを持っている。これは日本サッカーにおける「若手」を定義したひとつと言えるかも知れない。すなわち、五輪に出場できる23歳以下が、日本における「若手」で、U-23が「育成」の頂点なのだ。

 一方、例えばスペインのラ・リーガでは、ほとんどの1~2部B(実質3部)のクラブが、Bチームを持っている。プロ予備軍として、他の年齢制限のないチームを相手に鎬を削る(トップチームよりも下のカテゴリーに在籍し、理論上、2部までは昇格でき、過去には2部で優勝するBチームもあった)。

 例えば、バルセロナ、レアル・マドリー、アトレティコ・マドリーのBチームは、2部Bに所属している。特筆すべきは、そのチームのメンバー構成が基本的にU-20ということだ。

 無論、年齢規定は存在しないだけに、数人の例外はある。例えば、1年間ケガで棒に振った選手などは20歳以上でもプレーするし、昇格させるために有力な25歳ぐらいの選手を補強する場合もある。しかし、基本は20歳以下だ。こちらも若手育成の頂点である。

 では、この3歳の差をどう考えるべきだろうか。

 日本では、「五輪信仰」が拭えないほどに強い。好む好まざるにかかわらず、U-23という言葉に取り憑かれざるを得ないところがある。若手育成の年齢に、猶予が与えられているとも言えるし、厳しさが足りないとも言える。
 
 欧州では、基本的に五輪サッカーへの意識は低い。そもそも、欧州からの五輪出場はたったの4枠(U-21欧州選手権が五輪予選を兼ねるが、その出場選手は五輪では年齢的に出場機会がないこともある)。ワールドカップ、EURO、クラブチームではチャンピオンズリーグという明確な目標がある以上、五輪は重視されていないのだ。

 スペインでは20歳が近づくにつれ、プロフェッショナルとして見られ、一際容赦ないふるい落としが始まる。所属クラブで目立った活躍ができていない場合、他のクラブへの移籍をさっさと勧められる。好条件のオファーがある場合もないわけではないが、カテゴリーが下のクラブしかない場合もあるし、引退勧告のようなこともあるだろう。

 若手としてのモラトリアムは、ほとんどないに等しい。過酷な競争に揉まれ、多くの選手が台頭する。そこに競争力が生まれるのだ。

 U-20まで、日本と欧州の選手はかなり拮抗した力を持つと言われる。この5月、ポーランドで開催されるU-20W杯でも、躍進が期待される。安部裕葵、久保建英、西川潤などは世界に飛躍するポテンシャルを持っている。

 しかし、U-20W杯はゴールではない。

 20歳を過ぎてからのキャリアをどう過ごすべきか。そこから一気に差が付くケースも少なくない。それは3年間の“猶予”に理由があるのか――。少なくとも、検証の余地はあるはずだ。

文:小宮 良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月には『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たした。
 
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