【アジア大会】遠藤航が見据える「アンカーの新境地」|日本 4-0 パレスチナ

カテゴリ:日本代表

広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

2014年09月26日

自身の初得点よりも「ゼロで抑えたことが大きい」

1得点・1アシストと攻撃で決定的な仕事をしながら、守備では完封勝利に貢献。際立っていたのが、アンカーの遠藤の存在感だ。 (C) SOCCER DIGEST

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 危なげない勝利だった。攻め込まれるシーンがなかったわけではないが、決定的なピンチは皆無だったと言っていい。「人に強い」というパレスチナの前評判も、実際はそれほどでもなかった。プレスは緩く、球際の強さも感じられない。ボールポゼッションで上回り、常に主導権を握り続けた日本は4-0の完勝を収め、ベスト8に駒を進めた。
 
 序盤から攻勢に出た。13分、秋野央樹のFKから鈴木武蔵がヘッドで狙い、その2分後、岩波拓也のパスを受けた野津田岳人が狙いすましたミドルを放つ。そのまた2分後だった。
「チャンスだと思ったので上がっていった。武蔵もいいタイミングで落としてくれましたし、シュートも自分のイメージどおりに打てた」
 バイタルエリアで野津田の落としを足下に収めた遠藤航は、相手が寄せ切れないうちに前方の鈴木に預け、そのままエリア内に進入。鈴木からのリターンをダイレクトで叩いて、先制ゴールを突き刺した。
 追加点は27分。原川力のクロスから鈴木がヘディングシュートを決めた。
 
「3点目を取りに行くぞという雰囲気だった」(遠藤)という後半は、前掛かりとなった相手の勢いに押されても慌てず対応し、75分、狙いどおり勝負を決める3点目を奪った。
 中盤でワンタッチパスをつないでいる間に、途中出場の荒野拓馬が裏に抜け出そうとする。その動きを見逃さなかった遠藤が、正確なロングフィードを送り、荒野のゴールをお膳立てした。
 
 82分に原川がトドメを刺し、日本はグループCを首位で勝ち上がってきたパレスチナを難なく退けた。攻守両面で力の差を見せつけた完勝だった。
 
「4-0で勝ったという結果はプラスだとしても、まだまだ反省点はある。次の試合に向けてしっかりと改善していきたい」
 盤石の勝利にも、浮かれた様子は微塵もなかった遠藤は、イラク戦と同様、このパレスチナ戦でも4-3-3のアンカーを任された。そして、1得点・1アシストという攻撃面での貢献だけでなく、敗れたイラク戦の反省を活かして、無失点にも貢献した。
 
「イラク戦はどちらかというと、(大島)僚太と(原川)力を前に行かせつつ、僕もずれながらボールを奪えたらいいなと思っていたんですけど、なかなか前からのプレスがハマらないまま、僕もずれてしまって、真ん中のスペースを使われるシーンが多かった」
 
 この失敗を教訓に、パレスチナ戦はできるだけ自分の持ち場を離れず真ん中のスペースを空けないように心掛け、そこで入ってきたボールを潰し、素早いプレスバックでセカンドボールもしっかり回収した。
 
 大会4試合目にして、「意識していた」という待望の初ゴールを奪った遠藤は、気持ち的に楽になったと振り返りつつ、それよりも「ゼロで抑えたことのほうが大きい」と守備での手応えに満足げだった。
「アンカーは本当に、しっかりと守備をすることがまず大前提としてある」
 ディフェンスを疎かにしてまで、攻撃参加をするつもりはない。最優先すべきは守備。そのスタンスを崩すつもりはないし、「貪欲に前に行きすぎるようなポジションではない」と本人も理解している。
 
 ただ、パレスチナ戦のゴールによって、「ああやって得点が取れるっていうのは自信になった」。基本的には「攻撃は好きなタイプ。その面白さを楽しめている部分はあります」と自己分析する。攻撃を加速させるパスの供給源としての役割も、「CBよりアンカーのほうが、FWとの距離も近いし、前線にもパスを出しやすい。そこは自分の良さとして、どんどん出していければいい」と意欲を見せる。
 
 現チームは、遠藤が攻撃力を発揮しやすい環境が整っているとも言えるだろう。インサイドハーフの大島や原川と互いにフォローし合う関係性は、実戦や練習を重ねるごとに向上している。3人ともが攻撃や守備に偏りすぎることなく、誰かが上がれば、誰かが下がるといった連係はスムーズで、遠藤も「僕が上がれば、僚太や力が下がってくれると信じています」と厚い信頼を寄せている。
 
 1トップの鈴木とも息の合ったプレーを見せており、「武蔵は常に、相手に脅威を与えられるポジションで基点を作ってくれている。そこを上手く使いながら、行ける時は行きたい」と語る遠藤は、パレスチナ戦のゴールはもちろん、イラク戦でも鈴木の落としから惜しいシュートを放っている。
 
「今日のような得点ができれば、新たな自分の良さが生まれると思います」
 守備を完璧にこなしながら、攻撃でも違いを生み出すアンカーに――。試合後のミックスゾーンで「もうちょっと運動量を上げられるかな、とも思いました」と、貪欲に改善点を口にした遠藤の進化は、これからさらに本格化していくに違いない。
 
取材・文:広島由寛(週刊サッカーダイジェスト)
 
【日本U-21代表 アジア大会日程・結果】
9月14日(日)クウェート/4-1
9月17日(水)イラク戦/1-3
9月21日(日)ネパール戦//4-0
9月25日(木)ラウンド16・パレスチナ戦/4-0
9月28日(日)準々決勝
9月30日(火)準決勝
10月2日(木)決勝/3位決定戦
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