バルサ下部組織に所属するエースのイ・スンウをいかに抑えるか。
タイで開催中のU-16アジア選手権で、日本はグループリーグを2位で通過。U-17ワールドカップの出場権を懸けて、9月14日に韓国と準々決勝を戦うこととなった。同国の最強世代とも言われる韓国を相手に、日本はいかに立ち向かうのか。グループリーグでの戦いぶりを振り返りつつ、準々決勝のポイントを探る。
ポイント1)グループリーグでの収穫と課題は?
グループリーグの3試合で7得点を挙げた攻撃面は評価できる。ポゼッションから相手の背後へ通すボールの質が高くなっており、狙い通りの形で得点はできている。
しかし一方で、守備には粗さが目立った。ゲームへの入り方が悪く、とりわけ相手のカウンターへの対応は不十分。3試合を通して前半は一人ひとりの距離が遠く、パスミスが目立ち、そこでボールを奪われて危険なシーンにつながっていた。
第1戦の香港戦(2-0)、第2戦の中国戦(3-0)は相手が実力で劣るからこそ失点を免れたが、実力が拮抗する第3戦のオーストラリア戦(2-4)では、そうした甘さが結果に表われた。ドリブルで自陣深くに侵入を許し、不用意に与えたFKから失点すると、その直後にはロングボールの処理をGKが誤って失点。2-3で迎えた4失点目は、カウンターから浅い最終ラインをスルーパス1本で破られた。いずれも自分たちのミスを起点に奪われた失点だった。
しかし、こうした反省材料がグループリーグ最終戦で出たことは、前向きに捉えるべきだ。この教訓を、出場権を懸けた準々決勝で生かせば、敗戦も大きなプラスになる。
ポイント2)グループリーグで好パフォーマンスを見せた選手は?
堂安律(G大阪ユース)と菅大輝(札幌U-18)、阿部雅志(星稜高)の3人が3試合を通して鋭い動きを見せた。特に堂安と菅は、ともに左足に絶対の自信を持つテクニシャンで、その自信がプレーに表われている。スリッピーで土がぬかるんだピッチをものともせず、正確にボールを捉え、シュートだけでなく、ドリブルやパスの質も高い。
阿部は機転の利いた動きがチームを助けている。SBとして、効果的なオーバーラップを見せるほか、状況に応じたセンターエリアでのプレー、さらには要所でのボール奪取が光り、吉武監督の信頼を勝ち取りつつある。
他にもオーストラリア戦でゴールを決めた安井拓也と佐々木匠も調子を上げている。インサイドハーフとウイングをこなす安井と、フリーマン(CF)の佐々木の運動量がさらに上がれば、攻撃はより活性化するだろう。
3)準々決勝の相手・韓国はどんなチーム?
率直に言えば、今大会ナンバーワンの強さを誇るチームだ。韓国のキーマンは3人挙げられる。FWイ・スンウ、MFユ・スンミン、チャン・ギョルフィ。イ・スンウとチャン・ギョルフィはバルセロナの下部組織に所属し、とりわけイ・スンウはバルセロナU-15時代に、メッシが記録した30試合・37得点の記録を塗り替える、29試合・38得点をマークするなど図抜けた存在だ。
ボールを持ったら切れ味鋭いドリブルで仕掛けるイ・スンウを軸に、テクニックとスピードがあるチャン・ギョルフィ、高さと巧さを兼ね備えたユ・スンミンが絡み、バリエーションと破壊力に富んだ攻撃を展開する。以前のようなロングボール一辺倒のサッカーではなく、ポゼッションしながら、前線3人の能力を生かすサッカーを見せている。
4)準々決勝で勝つためのポイントは?
最大の脅威となるのは、間違いなく前線の3人だ。特にイ・スンウのドリブルは、やっかいだ。安易に複数のマークをつけて止めにかかると、はたいてから素早くスペースへ飛び出してもらう動きにも長けているため、最終ラインを一気に破られる恐れがある。
10番を背負うこのエースのドリブルを警戒しつつも、他のアタッカーのポジショニングにも注意を怠ってはいけない。そのうえでチャレンジ&カバーと強気のラインコントロールができるかが、勝負の鍵を握る。
地上戦にばかり気を取られてもいけない。ユ・スンミンやベンチに控えるFWリ・ヒョンキョンは高さがあり、フィジカルも強い。空中戦も駆使してくるだけに、最終ラインは90分間気の抜けない戦いになる。
ただし、つけ入る隙はある。攻撃陣は強力なメンバーを揃えるが、守備は意外に脆い。不用意にマークを外す場面もあり、日本の流動的なパス回しで攪乱できれば、十分に勝機はある。
ポイントはやはり、これまで98ジャパンが徹底してきた全体のコンパクトネスだ。韓国の攻撃を怖がらずにラインを押し上げ、いかにコンパクトな陣形を保って戦えるか。これが勝利を呼び込むための絶対条件だ。
取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)
ポイント1)グループリーグでの収穫と課題は?
グループリーグの3試合で7得点を挙げた攻撃面は評価できる。ポゼッションから相手の背後へ通すボールの質が高くなっており、狙い通りの形で得点はできている。
しかし一方で、守備には粗さが目立った。ゲームへの入り方が悪く、とりわけ相手のカウンターへの対応は不十分。3試合を通して前半は一人ひとりの距離が遠く、パスミスが目立ち、そこでボールを奪われて危険なシーンにつながっていた。
第1戦の香港戦(2-0)、第2戦の中国戦(3-0)は相手が実力で劣るからこそ失点を免れたが、実力が拮抗する第3戦のオーストラリア戦(2-4)では、そうした甘さが結果に表われた。ドリブルで自陣深くに侵入を許し、不用意に与えたFKから失点すると、その直後にはロングボールの処理をGKが誤って失点。2-3で迎えた4失点目は、カウンターから浅い最終ラインをスルーパス1本で破られた。いずれも自分たちのミスを起点に奪われた失点だった。
しかし、こうした反省材料がグループリーグ最終戦で出たことは、前向きに捉えるべきだ。この教訓を、出場権を懸けた準々決勝で生かせば、敗戦も大きなプラスになる。
ポイント2)グループリーグで好パフォーマンスを見せた選手は?
堂安律(G大阪ユース)と菅大輝(札幌U-18)、阿部雅志(星稜高)の3人が3試合を通して鋭い動きを見せた。特に堂安と菅は、ともに左足に絶対の自信を持つテクニシャンで、その自信がプレーに表われている。スリッピーで土がぬかるんだピッチをものともせず、正確にボールを捉え、シュートだけでなく、ドリブルやパスの質も高い。
阿部は機転の利いた動きがチームを助けている。SBとして、効果的なオーバーラップを見せるほか、状況に応じたセンターエリアでのプレー、さらには要所でのボール奪取が光り、吉武監督の信頼を勝ち取りつつある。
他にもオーストラリア戦でゴールを決めた安井拓也と佐々木匠も調子を上げている。インサイドハーフとウイングをこなす安井と、フリーマン(CF)の佐々木の運動量がさらに上がれば、攻撃はより活性化するだろう。
3)準々決勝の相手・韓国はどんなチーム?
率直に言えば、今大会ナンバーワンの強さを誇るチームだ。韓国のキーマンは3人挙げられる。FWイ・スンウ、MFユ・スンミン、チャン・ギョルフィ。イ・スンウとチャン・ギョルフィはバルセロナの下部組織に所属し、とりわけイ・スンウはバルセロナU-15時代に、メッシが記録した30試合・37得点の記録を塗り替える、29試合・38得点をマークするなど図抜けた存在だ。
ボールを持ったら切れ味鋭いドリブルで仕掛けるイ・スンウを軸に、テクニックとスピードがあるチャン・ギョルフィ、高さと巧さを兼ね備えたユ・スンミンが絡み、バリエーションと破壊力に富んだ攻撃を展開する。以前のようなロングボール一辺倒のサッカーではなく、ポゼッションしながら、前線3人の能力を生かすサッカーを見せている。
4)準々決勝で勝つためのポイントは?
最大の脅威となるのは、間違いなく前線の3人だ。特にイ・スンウのドリブルは、やっかいだ。安易に複数のマークをつけて止めにかかると、はたいてから素早くスペースへ飛び出してもらう動きにも長けているため、最終ラインを一気に破られる恐れがある。
10番を背負うこのエースのドリブルを警戒しつつも、他のアタッカーのポジショニングにも注意を怠ってはいけない。そのうえでチャレンジ&カバーと強気のラインコントロールができるかが、勝負の鍵を握る。
地上戦にばかり気を取られてもいけない。ユ・スンミンやベンチに控えるFWリ・ヒョンキョンは高さがあり、フィジカルも強い。空中戦も駆使してくるだけに、最終ラインは90分間気の抜けない戦いになる。
ただし、つけ入る隙はある。攻撃陣は強力なメンバーを揃えるが、守備は意外に脆い。不用意にマークを外す場面もあり、日本の流動的なパス回しで攪乱できれば、十分に勝機はある。
ポイントはやはり、これまで98ジャパンが徹底してきた全体のコンパクトネスだ。韓国の攻撃を怖がらずにラインを押し上げ、いかにコンパクトな陣形を保って戦えるか。これが勝利を呼び込むための絶対条件だ。
取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)