［高校選手権・準々決勝］尚志 １-０ 帝京長岡／１月５日／等々力

　神村学園、東福岡、前橋育英ら強豪校を破って勝ち上がってきた福島県代表の尚志が、新潟県代表の帝京長岡を破り、準決勝進出を決めた。前半22分に奪った２年生FW染野唯月の１ゴールを守り切っての勝利だった。

　尚志は、３回戦まで最終ラインで健闘していた黒澤誓哉を累積警告で欠いて挑む一戦だった。CBには３試合すべてでボランチとしてフル出場していた主将の大川健が入り、ボランチは坂下健将と富岡理久がコンビを組んだ。

　これまで軽快なパスサッカーを武器に敵陣に切り込むスタイルで勝ち上がってきた尚志だったが、今日の試合では“尚志らしさ”はあえて封印。帝京長岡の小池晴輝と晴山岬という強力な２枚を中心とした攻撃陣を相手に「自分たちらしさよりも“勝つため”」（仲村浩二監督）に自陣を固めた。

　それでも後半は特に攻め込まれる場面が続き、あわやというシーンは１度や２度ではなかった。だが、耐え切るだけの粘り強さが今の尚志には備わっていた。

　CBを任された大川は「監督に任せられたらそのポジションを出来ないといけない」という思いを胸に無失点で戦いを終え、試合中は険しかった表情に、どことなくホッとしたものを滲ませた。

「本当に苦しい時間が多かった。そんななかでも全員でしっかり守れたことは良かった。（フォファナ）マリックやGKの森本（涼太）、SBのふたりと声を掛けながら、ラインコントロールもできたので良かったです。

　監督からは、自分たちらしいサッカーではないけど、『これで耐えてくれ』という声をかけられていました。キャプテンとしても、自分が一番声を出して、守り切ろうと思っていた。今日は自分だけではなく、全員でその意識が持てたのかなと思います」

　まさに全員で守り切った勝利だった。攻撃陣は前線からプレッシャーをかけ続け、大川は中盤と最終ラインをコンパクトにまとめることを心掛けた。攻め入られても落ち着きを失わず、仲間との連係で冷静にシュートコースを消した。GKの森本涼太はファインセーブで何度もチームを救った。後半アディショナルタイムに入っても、彼らの集中力は途切れなかった。

　準決勝の相手は青森県代表の青森山田。１週間後の12日に埼玉スタジアム2002で対戦する。空いた期間、福島に戻って調整することも視野に入れ、準備を進めるという。

「チームはいますごくいい状態。もうチームとして一丸になってるとは思うんですが、青森山田戦に向けてまた改めてチームとしての意識を高め、いい準備ができたらと思います」

　１年前、初戦で東福岡に敗れた試合にも出場していたという大川。以来、私生活から改めて皆の手本となるべく努力し、仲間たちと研鑽を積み上げてきた。７年ぶりの準決勝進出を決めた尚志は、残り２試合を勝ち上がるつもりだ。

取材・文●熊 介子（サッカーダイジェストWeb編集部）