強く、高く、速く、そして何より勇ましい。DF橋岡大樹の“らしさ”が詰まったゲームだった。
 
　U-19アジア選手権・準々決勝のインドネシア戦、日本守備陣の柱と期待されてきた男は、それにふさわしいパフォーマンスで日本の世界切符獲得に大きく貢献。２－０での完封勝利の立て役者となった。
 
　完全アウェーの６万観衆を黙らせてやる――。選手がそんなことを確認し合って臨んだこの試合だが、DFにとっては神経をすり減らすような戦いだった。相手の狙いがカウンターにあることは分かりやすすぎるくらいに明らか。一瞬の隙も許されぬリスクマネジメントを継続しながらの戦いだった。
 
「（インドネシアは）サイドの選手が速くてFWが裏に抜け出していくということも事前に聞いていて、その（スカウティングの）通りにきたので、自分的にも整理できていたのでやりやすかった」
 
　そうこともなげに振り返るが、実際はギリギリの攻防も頻発していた。しかし１対１では無類の強さを見せ続け、鬼神のごとき存在感でゴール前に鍵をかけた。先制してからも「安堵なんてしなかった」と言うように、少しも緩むことなく戦い続ける。特に豪雨の中で「雨が降って少し視界も見づらくなってきた」後半は、さらに存在感が強まった。
 

「相手がロングボールを蹴ることが多くなってくるなか、まずしっかり撥ね返すこと、割り切って簡単にセーフティにプレーすることを今回の試合で求められていたと思う。僕自身もはっきりやっていこうという気持ちでやっていた」

　豪雨の影響でピッチ状態も悪化の一途を辿っており、特にペナルティエリア付近はリスクの宝庫になっていた。だから難しいことはしない。シンプルなプレーを率先して実践し、周りへのメッセージにもした。「僕らDFの仕事はまず相手をゼロで抑えること」と繰り返し強調してきたストッパーは、最も大事な試合で完封勝利を演じる原動力となった。
 
　橋岡が持つ大きな特長は抜群の瞬発力に象徴される高いアスリート能力にあるが、それ“だけ”の選手ならば、それ“まで”の選手にしかなれない。橋岡が個性的なのは、挑戦者としてのマインドを継続して持ち続けていられることだ。