「本当に“ちびりそう”になった」
バルセロナ、スペイン代表で守備の中心として君臨するジェラール・ピケ。世界トップクラスのCBとして崇められ、歯に衣着せぬ発言も有名な彼に怖いものなどないように思われるが、駆け出し時代にはある先輩選手の前で死ぬほど恐ろしい目に遭ったそうだ。
英紙『Evening Standard』が報じたところによると、ピケは『The Players' Tribune』のなかで、この逸話を披露している。
英紙『Evening Standard』が報じたところによると、ピケは『The Players' Tribune』のなかで、この逸話を披露している。
2004年にマンチェスター・ユナイテッドに加入した十代のピケは、「ライアン・ギグスやリオ・ファーディナンドといった凄い選手がいるなかで、僕はできるだけ目立たないように心掛けていた」という小心ぶりだったが、なかでも一番恐れていたのが、闘将ロイ・キーンだった。
ある時、狭いロッカールームで選手全員がアレックス・ファーガソン監督を待っていた時、静けさのなかで携帯電話のバイブ音が響いた。すると、“仕事場”での携帯電話の使用に否定的だったキーンが怒り出し、部屋中を探し始めた。
ピケはそれが自分のものであるとすぐに悟ったが、彼のズボンのポケットに入っていることにキーンは気付かず、神経質に見回す。その姿を見て、ピケはある映画のワンシーンを思い浮かべたという。
「『シャイニング』でジャック・ニコルソンが斧で叩き破ったドアの隙間から顔を出して覗いている、あの有名な場面さ。本当に、あんな感じだったんだ」
音源を確認できなかったキーン。今度は直接、チームメイトに問い質したという。
「彼は全員に向かって大声で聞いた。『誰の電話だ!?』。誰も返事をしない。もう一度聞いても、静寂のまま。そして3度目……」
ついにキーンは、「F」で始まる単語を吐き捨てながら、ぶちキレ。これに震え上がったピケは、「小さな子どものように」恐る恐る「本当にすみません。僕のです」と答えたのだった。
「彼はみんなの前で怒り狂った。信じられなかったよ。本当に“ちびりそう”になった」
このように恐怖体験を振り返ったピケ。だが、キーンに対して悪感情を抱いているわけではなく、「あれは良い教訓になった」と感謝すらしている。
「今では、若い選手はみんな、試合前にスマホを見ている。でも、十数年前は違った。誰も、そういうことはしなかったんだ。特にマンチェスター・U、それもロイがいるロッカールームではね。あれは、僕がマンチェスター・Uで犯した1000の過ちのなかのひとつさ」