[選手権３回戦] 聖和学園 ０-５ 青森山田／2017年１月３日／浦和駒場
 
　一言で表わしてしまえば、「GKの出番がない試合」だったのは確かだろう。打たれたシュートは前後半１本ずつの計２本。水も漏らさぬ青森山田の守備網は聖和学園のドリブルサッカーを完全に捕らえており、スキらしいスキを見せることなく試合を終わらせた。５-０というスコアもそうだが、試合内容でも確かな差のあるゲームだった。
 
　とはいえ、こういう試合展開であっても青森山田のU-19日本代表GK・廣末陸には見せられる武器がある。揺るがぬこだわりを持って練習に励んで来た“キック”である。この日も風下だった前半は「あえて低いボールで蹴った」「風に流されにくい縦回転を意識した」と、高校生のGKがあまり意識しないような球質の部分にまで踏み込みながら、ターゲット目掛けて蹴り込んでみせた。
 
　キックの原点はFC東京U-15深川に所属していた中学時代にさかのぼる。もともと小学生時代はストライカーだったこともあり、足技には並みのGK以上の自信があった。それに加えて中学時代は「シュート練習はとにかくよくやっていました」と、GKとしては珍しいシュート練習を好んでいたという。「振り切ることを覚えたのはシュートの自主練習」と、ボールを強く、正確に捉えることにこだわるシュート練習を通じて、独特のキック感覚を身に付けたと言う。
 
　高円宮杯U-18チャンピオンシップではPK戦のキッカーも務めたが、「キックに自信があるとか言っている選手があの距離を外してはダメでしょ」と見事にゴール。キックの質については「プロでも絶対に負けないと思っている」としつつ、GKとしての将来像も「キックを武器にしながら、セービングとかも磨いていきたい」と明確に抱いている。
 
　今大会ここまで無失点のみならず、高円宮杯プレミアリーグ、同チャンピオンシップから継続して５試合連続で無失点。「変なミスから失点とかもないし、これは続けていきたい」と、GKとして絶対の指針である無失点を目指すことを意識しながら、「キックの場面でもセービングなどの（GKとしての）本質のところでも違いというものを見せていきたい」と言葉に自信を込め、静かに意気込んでいる。
 
取材・文：川端暁彦（フリーライター）

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