Ｊリーグは来季から分配金を増額し、さらに外国人選手の登録枠も拡大する。これらの〝変革〞は、移籍マーケットにどのような影響を与えるのか。国内外の事情に精通するエージェントの田邊伸明氏に話を訊いた。

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　リーグの「活性化」においては、やはり日本人選手の移籍が最も有効です。極端なことを言えば、レンタルでもいいから本田圭佑（ミラン）や香川真司（ドルトムント）を呼び戻したほうがいいわけです。
　
　欧州組でなくとも、国内の魅力ある日本人選手で十分に効果はあります。好例は浦和でしょう。広島から柏木陽介、森脇良太、西川周作といった主力クラスを獲得し、今、黄金期を取り戻そうとしている。一方で、高木俊幸や武藤雄樹のようないぶし銀を揃え、なおかつ外国人選手はあまり獲らない。

　大型補強のイメージが強く、批判に晒されることもしばしばあるものの、しっかり自分たちのサッカーに見合う選手を見極めている。外国人選手に頼らず、日本人選手で強さを保ち、さらに収益につなげている意味では、チーム作りの良いモデルだと思います。
 
　Ｊ１クラブはすでに、来季に向けて動き始めています。３年連続得点王に輝いた大久保嘉人のようなビッグネームはもちろん、今オフの主役候補となり得るのがリオ五輪世代の 「1994年生まれ」です。

　大半の選手は２～３年契約を結ぶため、高卒や昇格組は21歳の時に一度契約が切れます。しかし、21歳ではＴＣ（編集部・注／トレーニングコンペンセーション[育成補償金]の略。満23歳の１月31日の直前の１月１日までに移籍する場合、獲得しようとするクラブは、現所属クラブに対して、満21歳になる１月31日までの「トレーニング期間」に計算される育成保証金を支払う必要がある）がかかるので、国内移籍はなかなか実現しない。21歳で契約更新する際は概ね２年契約ですから、来年23歳になる選手が狙い目です。岩波拓也のほか、植田直通や中島翔哉、野津田岳人、亀川諒史あたりの動向には目を配っておくべきでしょう。
 
　23歳以降は２～３年契約のサイクルが大半なので、25歳か26歳、さらに28歳か29歳の選手はフリートランスファーの可能性が高い。また、昨年や一昨年に移籍しながらくすぶっている選手、Ｊ２降格が決まっているクラブ（福岡、湘南）、Ｊ１昇格を見据えるクラブはオフに動きがあるはずです。

　ただ、Ｊ２から上がるチームはＪ１を戦い抜くために相当な補強が必要で、トップカテゴリーでやることを前提にオファーしても、昇格が決まらないと読めない部分が多いのは否めません。
 
　また、マンチェスター・シティＦＣのホールディング会社である『シティ・フットボール・グループ』と資本提携する横浜がどう動くか。先述したアイザック・ドル・スポーティングダイレクターの手腕に加えて、契約切れが囁かれる中村俊輔や中澤佑二の去就からも目が離せない。
 
　ただ、分配金増額や外国籍選手枠拡大にあたって、現時点では各クラブとも周囲がどう出るのか、慎重に見定めている感があります。あるいは選手側も、今オフは敢えて延長契約のオファーを更新しないなど、例年に比べて〝静かなオフ〞になる事態も考えられる。制度とは１年目よりも２年目のほうがいろんなことが起こるものですから、クラブと選手間で〝駆け引き〞が本格的に行なわれるのは、来年以降かもしれません。

解説●田邊伸明（日本サッカー協会登録仲介人）
PROFILE　たなべ・のぶあき／1966年、東京都生まれ。ジェブエンターテイメント代表取締役。稲本潤一（札幌）、大久保嘉人（川崎）、槙野智章（浦和）、森脇良太（浦和）、浅野拓磨（シュツットガルト）、橋本拳人（FC東京）らと契約する。日本エージェント界の草分け的人物である。